数学アマノジャク

数学の入試問題の解説をしたいブログ. 「暗記数学」に対抗して「考える数学」を広めていきます. 現在は京大入試の過去問解説を中心に鋭意更新中.

カテゴリ: 自作模試

概要

自作の模試を作るシリーズ第四弾です.

今回の模試『令和3年度私擬無冠模試』はどこの大学も冠さない,ただの自作模試です.

東工大入試と京大特色入試の中間くらいの難易度だと思うので,忙しい受験生は避けた方が無難です.

時間のゆとりがあるときに,やりたい問題だけやってみてください.

5問構成で推奨試験時間240分です.

問題ファイルは以下のリンクからダウンロードできます.

以下では解答例を載せているので,問題を解こうとしている方は見ない方が良いと思います.

関連記事

過去の自作模試の問題・解答です.

これらは難易度を一般入試に合わせているので,本模試より問題演習に適切な難易度かもしれません.

京大模試サンプル (没問題集)

令和3年度私擬京大入試

令和3年度後期私擬京大入試

令和3年度私擬東工大入試

目次

模試の難易度評価

本模試の大問構成,分野,配点,難易度評価は以下のようになっています.

無冠模試の分野・配点

  1. 整数・ベクトル (C60), 40点
  2. 微積分 (B35), 40点
  3. 代数 (B40), 40点
  4. ゲーム理論 (B60), 40点
  5. 数列 (C45), 40点

模試全体の構成

どこの大学も模さないということで,一般入試ではあまり見かけないような問題が中心です.

高校範囲の知識で解けますが,入試で出てきたら「新傾向」と言われるような分野や,一般入試では少し難しかったり,面倒だったりする問題が多めです.

模試全体の難易度

時間内に解こうとすると,第一問,第四問が鬼門になると思います.

第一問は上手く思いつけば短時間で解答できますが,なかなか思いつきにくいと思います.

対照的に,第四問は作業量が多いだけで,根気よく実験していけば,どちらの小問も特別な発想なく解答可能です.

一方.第二問・第三問は一般入試レベルの問題なので,まずはここから取り組むとやりやすいでしょう.

第五問も実験すれば予想くらいは立てられると思います.

まずは第二問,第三問,第五問の予想までやってみて,その後に第一問,第四問,第五問の証明でできそうなものからやっていくという流れでしょうか.

総評

$4$時間で全問出来る人は間違いなく凄いですが,$3$問程度の正解でも一般受験層のかなり上位に位置しているのではないかと思います.

「面倒」な問題が多いですが,第一問以外は手が出る問題だと思うので,模試として考えれば$1, 2$問正解するのが目標でしょうか.

各大問の解答の方針と講評

大問ごとの概要です.

第一問 整数・ベクトル (C60), 40点

第一問の解答

概要 (第一問)

ベクトルと整数の融合問題です.

この問題はR. L. Graham,B. L. RothschildとE. G. Strausが1974年に発表した定理を基にしています.

本問では,その定理で$n= 2$とした場合を誘導付きで考えています.

なお,元の定理はThe American Mathematical Monthlyに掲載された,"Are there $n + 2$ Points in $E^n$ with Odd Integral Distances?"に載っているので興味があれば参照してください.

方針 (第一問)

(1)は実際に$(2k + 1)^2$を計算すればすぐにわかります.

(2)では(1)が誘導になっているので,まずは(1)の結果を(2)で使いやすいように適当に一般化しておくと良いでしょう.

その後は,背理法を使うと比較的易しく解けます.

講評 (第一問)

誘導も付けたのでそう難しくないだろうと思っていましたが,見込みが外れたようです.

(2)は直接示すのはしんどいので,背理法で示すことになると思いますが,その次の手が見えにくかったかもしれません.

背理法の仮定が,$A, B, C$が同一平面上にあるということを意味するとさえ見抜ければ,力技でも解答可能です.

解答例では,内積と角を利用しています.

原案では誘導無しで

「どの$2$点間の距離も奇数であるような$4$点は同一平面上にないことを示せ」

という問題文を考えていたので,やさしくするための誘導のせいで余計難しくなってしまったかも?

第二問 微積分 (B35), 40点

第二問の解答

概要 (第二問)

フレネル積分を題材とした微積分と数列の問題です.

他の問題と比べると,一番一般入試の問題に近い問題だと思います.

方針 (第二問)

$s = t^2$のように置換するとかなり見えやすくなります.

あとはそれぞれの小問の目標に向かって良い評価を探していきます.

講評 (第二問)

(1)と(2)は似た考え方をしますが並列的な構成になっているので,どちらを先に解いても大丈夫です.

片方が解ければもう片方もそれなりにやさしく解けるようになっています.

(2)の不等式評価の方がひねりが少なくて多少解きやすいかもしれません.

この大問からもう少し考察すると,有界な単調済列が収束することさえ認めれば,$\displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n$と$\displaystyle \lim_{n \to \infty} b_n$が存在して,両者が等しいことを示せます.

すると,値は求まりませんが,フレネル積分の$x \to \infty$の極限が存在することも容易に示せます.

値を求めたい場合は複素関数として考えて,留数定理を用いるのが有効です.

第三問 代数 (B40), 40点

第三問の解答

概要 (第三問)

複素数と似て非なる数体系である「分解型複素数」が題材です.

複素数における「極形式」に相当するものを考える問題です.

方針 (第三問)

(1)は定義にたがって計算すれば自然と示せます.

(2)はただの見掛け倒しで,簡単な領域の問題です.この問題独特の概念はほとんど必要ありません.

(3)は,ド・モアブルの定理の証明とほとんど同様に示せます.

講評 (第三問)

この五問の中だと一番簡単な問題です.

第二問と第三問は,一般入試で出題されても捨て問にはならないと思います.

手間は多少かかりますが,それも他の問題と比べればそこまで大したことはありません.

(2)では,境界は含まず$(0, 0)$だけが含まれます.

そこまで重要というわけではないですが,一応注意しながら解くといいでしょう.

第四問 ゲーム理論 (B60), 40点

第四問の解答

概要 (第四問)

かの有名な「三目並べ」です.「二人零和有限確定完全情報ゲーム」とよばれるゲームの一種になります.

分野は「場合の数」にしようかとも思ったのですが,しっくりこなかったのでそのまま「ゲーム理論」ということにしました.

「組み合わせ」なら妥当なのですが.

手間がかかるので,この手のタイプは一般入試では出題されませんが,京大特色入試のような時間にゆとりのある試験だと見ることもあります.

方針 (第四問)

(1)

「ゲーム木」の考え方が有効で,それに近いものを考えれば上手く示せます.

すべての盤面を考えると図示・場合分けだけでも大変です.

対称性を利用して似た盤面を同一視するなど,とにかく場合分けを減らすことが肝心です.

解答例では$10$程度の場合分けに抑えています.多分もっと減らせるはず.

(2)

(1)が誘導になっています.

実験してみると,(1)より少し大きい盤面では勝てることが分かるはず.

講評 (第四問)

解答例のようにたくさん図示する必要はありません.あれは手書きでやるものではないです.

書き出せばすぐ分かるのは明らかなので,場合分けが発生する個所など,要点を抑えれば十分です.

有名な題材ですが,数学の対象として考えたことのある人はほとんどいないと想像します.

最重要な$3 \times 3$がとても面倒なので練習問題としてやりにくいのだと思います.

既知の人が十分いることが想定されるので,実際の入試でも出しにくいですね.

もう少しひねったオリジナルのゲームを考えることになると思います.

第五問 数列 (C45), 40点

第五問の解答

概要 (第五問)

Wikipediaで偶然見つけた「Van Eck数列 (Van Eck's sequence)」という数列の構成ルールをいじっていたら,この数列になりました.

元々人工的な数列ですが,それをさらにいじったので極めて人工的な感じのする数列になっています.

方針 (第五問)

一般項が予想できるまで実験しましょう.

予想した後は帰納法がやりやすいと思います.

講評 (第五問)

そう難しい問題ではないと思いますが,見た目に圧倒されやすいかもしれません.

第四問の後なのも,難しく見える要因になりそうです.

実際は一般入試でも出題できる程度の難易度です.

まあまず見たことのない数列だと思うので,実験する以外ないですね.

この数列自体は一応発見されているようで,OEISには登録されています.

ただし,本問の漸化式は記述されていなかったので,未発見だったのかもしれません.

ちなみに,Van Eck's sequenceもOEISに登録されています.

(ii)の2.の部分で, $$ a_{n + 1} = 0 $$ とすればVan Eck's sequenceになります.

独り言

問題により難易度・手間が激しく異なるので,手のつきそうな問題だけ解く方が楽しめるかもしれません.

ちなみに,今回はほぼ新作です.

次の模試も考えてはいますが,10月は大手予備校の模試のシーズンなので,早くても11月の上旬になると思います.

関連記事

過去の自作模試の問題・解答です.

京大模試サンプル (没問題集)

令和3年度私擬京大入試

令和3年度後期私擬京大入試

令和3年度私擬東工大入試

このブログの全記事の一覧を用意しました.年度別に整理してあります.

過去問解説記事一覧【年度別】

概要

未発表の過去作を集めて自作の模試を作るシリーズ第三弾です.

今回の模試『令和3年度私擬東工大入試』は東工大模試です.

5問構成で試験時間180分です.

問題ファイルは以下のリンクからダウンロードできます.

以下では解答例を掲載しているので,問題を解こうとしている方は見ない方が良いと思います.

目次

模試の難易度評価

本模試の大問構成,分野,配点,難易度評価は以下のようになっています.

自作東工大模試の分野・配点

  1. 複素数 (A20), 60点
  2. 微積分 (C45), 60点
  3. 整数 (B25), 60点
  4. 微積分 (B35), 60点
  5. 確率 (B25), 60点

今回は自作のため特に主観が入りやすく,難易度はあまりあてにならないことに注意してください.

2020年の難易度評価

参考用に,2020年の東工大入試の難易度評価を置いておきます.

  1. 整数 (A20), 60点
  2. 複素数 (B30), 60点
  3. 図形の論証 (C20), 60点
  4. 求積 (A20), 60点
  5. 積分漸化式・極限 (B40), 60点
難易度表記の説明 カッコ内の難易度表記はAA,A,B,C,Dの五段階による難易度評価と,演習する際の標準的な解答時間(五分刻み)です. 試験場では様々な要因により,ここに書いてあるよりも苦戦すると思います.

難易度評価は,それぞれ

  • AA:解けないと周りの受験生とかなり差がついてしまう問題
  • A:解ければとりあえず数学が足を引っ張ることはない,という難度の問題
  • B:解けると周囲に対してやや優位に立てるが,解けないとやや不利になる問題
  • C:数学が得意なら正答が狙える難度で,解けなくても困らないが,解けると大きく優位に立てる問題
  • D:難易度が高すぎて点数と釣り合わない,いわゆる「捨て」の問題

であることを大まかに表しています.

大体『大学への数学』より(受験生に)厳しい評価で,『東工大の数学20ヵ年』よりは甘い評価かなと思います. 数学が苦手な人は最低限Aの問題を確実にBの問題をできるところまで,数学が得意な人はCの問題まで完答するのが目標かなと思います. 難易度Dの問題はどんなに数学が得意な人でも部分点狙いが現実的でしょう. 個人的にはこの難易度の出題は作問者の判断ミスだと思っています.

試験全体の構成

微積$2$問,整数$1$問,複素数$1$問と,東工大入試でよく見かけるような分野構成のつもりです.

全体を通しての計算量はそう多くありませんが,第二問を中心にある程度計算量がある問題もあります.

そこまで発想力のいる問題はありませんが,後半$3$問はある程度考える必要があると思います.

模試全体の難易度

難易度や雰囲気も近づけたつもりですが,それを判断するのは解く側なのであまりコメントしないでおきます.

公開時はちょっと簡単すぎ (2020年くらい?) な気がしましたが,その後考えを改めむしろ少し難しいかもしれないと思うようになりました.

東工大入試の難易度の振れ幅は極めて大きいので,「例年の難易度」からは大きく外れていないと思います.

総評

第一問・第三問が易しめなのでまずは先に解いて確保し,その後第二問前半,第四問,第五問のうちできるところを確保,最後に第二問を時間が終わるまでやってみるという感じでしょうか.

東工大入試は問題の重厚さと比べ,解答スペースがあまり広くないので,今回もそれに合わせて論理的に重要なところを抑えつつ,ある程度簡潔に書くと良いと思います.

各大問の解答の方針と講評

大問ごとの概要です.

第一問 複素数 (A20), 60点

第一問の解答

概要 (第一問)

とある有名な定理の証明問題です.

2018年の北大後期入試第二問の前半とほぼ同様の出題です.

作問の労を惜しんだという批判は甘んじて受けましょう.

方針 (第一問)

(1): $A_1$を求めれば,$A_2$もついでに出てきます.

複素数の積が回転に対応していることを活かしましょう.

(2): 正三角形を「夾角が$\frac{\pi}{3}$の二等辺三角形」とみることがポイントです.

そう見えれば,複素数の乗法・商法の意味を考えれば容易に示せると思います.

講評 (第一問)

第一問なので比較的易しめの問題です.

誘導も付けたのでほとんど一本道で解けると思います.

時間がかかってもあまり問題はないですが,正答はしたいところです.

第二問 微積分 ((1):A15, (2):C30), 60点

第二問の解答

概要 (第二問)

(1)はやっぱり有名な曲線の図示問題ですが,どちらかといえばマイナーな媒介変数表示なので,見たことはない人も多いと思います.

(2)は計算問題ですが,「ただの」かどうかは知りません.

方針 (第二問)

(1)は指示に従えば解けます.

問題は(2)ですが,(1)の結果から立式した後,置換積分することまでは自然に思いつくはずです.

問題はその後ですが,有理関数の積分の王道に従って部分分数分解するか,もう一回置換積分をして$\frac{1}{\cos^n x}$の積分に帰着させるかのどちらかでやるのが思いつきやすいでしょうか.

解答例は後者でやっていますが,私が計算を苦手にしていることもあってあまりすっきりとしていません.

講評 (第二問)

解答例の公開前に難易度を口にしたくなかったというだけで,自作なので当然「ただの計算問題」かどうかはさすがに分かっています.

かなり大変です.

(2)の途中まではやることが分かりきっていますが,その後の計算量はかなり多く,見通しが立ちにくい計算を進めることになります.

時間をかければ解けるタイプの問題ではあるので,最後の計算は他の問題を解いてから手を付けるので良いと思います.

計算量が多く,詳細を書いていたら解答用紙にとても収まりきらないので,総評でも書きましたが,ただ代入,約分,変数を整理するだけのような論理的には重要でない部分はカットして,論証の主要な部分を書くのが良いでしょう.

第三問 整数 (B25), 60点

第三問の解答

概要 (第三問)

便宜上整数に分類していますが,有理数の問題です.

方針 (第三問)

とりあえず有理点に文字を置いて式を連立しましょう.

すると連立方程式が解けるので,自然と示せます.

講評 (第三問)

有理数同士の加減乗除は有理数になる,と言うのがポイントです.

そう難しくはないと思いますが,方針を思いつくのに苦戦することはあるかもしれません.

ところで,この問題は連立一次方程式に帰着されるので, (大学範囲の) 線形代数の知見を活用することもでき,$a, b, c$を具体的に求めずに証明可能だったりします.

線形代数を既習の方はやってみると面白いかもしれません.

当ブログでも後日別解として紹介することも考えています.

ちなみに,代数の言葉で言えば,本問の鍵は「$\mathbb{Q}$は体である」ということになります.

作った当時はあまり意識していませんでしたが.

第四問 微積分 (C35), 60点

第四問の解答

概要 (第四問)

微積の問題二問目です.

(2)で考えている定積分は楕円を折り返したときの共通部分の面積ですね.

方針 (第四問)

(1): $C_2$は$C_1$を$2\alpha$だけ回転させた図形になることがポイントです.

全体的に「角」が多用されているので,極座標のように考えると見通しが立ちやすいでしょう.

(2): (1)の誘導があるのでそう難しくはないと思います.

積分区間に$\alpha$を持っていけば,簡単に$\alpha$で微分できます.

講評 (第四問)

図形的に捉えられないと,(1)の計算量がかなり増えそうです.

また,例のごとく解答スペースの問題があるので,そこまで詳細にやらなくても,図形的に考察できれば十分な気もします.

第五問 確率 (B25), 60点

第五問の解答

概要 (第五問)

誤植があって,規則の$A, B, C$はそれぞれ$O, A, B$の間違いです.

確率の問題です.

この${ X_n }$によってとある図形が作図できます.

方針 (第五問)

とりあえず実験してみて,動きを追えればよいと思います.

解答用紙の大きさもあるので,適宜図示しながらざっくりと説明できれば容認されるのではないでしょうか.

厳密に示すなら解答例のように領域に名前を付けて証明していくか,ベクトルで求めるのが有力だと思います.

講評 (第五問)

解答例はまじめに示すこともできるよ,というもので,あれを解答欄に書くのは無理があることには注意してください.

解答例は問題の要求に対して過剰であまり気に入らないのであとで別解も出すつもりです.

そこまで難しい問題ではないと思っているのですが,特に作問者と解答者で感じ方が違いそうな問題なので,実は難しいかもしれません.

点がどのように変化していくのかを上手く追えると,簡単に解答できると思うので,それができるかが鍵となりそうです.

ちなみに,この操作によってフラクタル図形である「シェルピンスキーのガスケット」を近似的に作図できます.

解答例はフラクタル図形ができる様子まで考えているので,本問に対して過剰な記述になっているわけです.

独り言

今回は結構過去作を使えていて,後半3問はリライトはしていますが何年も前に作った未公開問題です.

次回はどこの大学の入試も模さない,「無冠模試」の予定です.

京大理学部特色と東工大一般の中間くらいの難易度の問題群 (5問,240分くらい?) を予定しています.

多分9月上旬に公開しますが,第三週の週末になる可能性もあるので,決まり次第お伝えします.

追記:次の自作模試 (というより問題セット) は9/11に公開予定です.

関連記事

過去の自作模試の問題・解答です.

京大模試サンプル (没問題集)

令和3年度私擬京大入試

令和3年度後期私擬京大入試

令和3年度無冠模試

このブログの全記事の一覧を用意しました.年度別に整理してあります.

過去問解説記事一覧【年度別】

概要

未発表の過去作を集めて自作の模試を作るシリーズ第二弾です.

今回の模試『令和3年度後期私擬京大入試』も京大模試です.

6問構成で試験時間150分です.

問題ファイルは以下のリンクからダウンロードできます.

問題ファイル

7/23: 問題不備があったので補足しました.

問題ファイル (補足前)

以下では問題の概要や解答例に触れているので,問題を解こうとしている方は見ない方が良いと思います.

各大問の解答例は以下のリンクからどうぞ.

目次

模試の難易度評価

本模試の大問構成,分野,難易度,配点は以下のようになっています.

自作京大模試の難易度評価

  1. 積分 (AA15), 30点
  2. 図形の論証 (A15), 30点
  3. 整数 (A20), 35点
  4. 整数・確率 (B30), 35点
  5. 数列 (B25), 35点
  6. 図形の論証 (C30), 35点

自作問題なのでいつも以上に主観的な評価になっていることに注意してください.

近年ならやや易しめの難易度,というつもりですが,解き方次第で計算量や見通しやすさが大きく変わるので,人によって感じる難易度が大きく異なると思います.

数学が得意な人には簡単に,苦手な人には (本来以上に) 難しく感じるなら思惑通りなのですが……

模試全体の難易度・構成等

前半は意図的に易しくしています.

易しくしすぎた気もしますが,下手に難しい方にぶれても仕方がないのでこんなものかなと思っています.

前半はスピーディーに解いて,後半に時間を回せれば最後まで十分解ききれると思います.

後半は難しめ.

試験場なら前半完答,後半の一問以上完答あたりがボーダーになりそうです.

得意な人なら後半でも二問は安定して解答できると思います.

2020年の難易度評価

参考用に,2020年の京大入試の難易度評価を置いておきます.

  1. 複素数 (A20), 30点
  2. 整数 (A25), 30点
  3. 図形の論証 (B25), 35点
  4. 整数 (C30), 35点
  5. 場合の数 (B20), 35点
  6. 求積 (A25), 35点
難易度表記の説明 カッコ内の難易度表記はAA,A,B,C,Dの五段階による難易度評価と,演習する際の標準的な解答時間(五分刻み)です. 試験場では様々な要因により,ここに書いてあるよりも苦戦すると思います.

難易度評価は,それぞれ

  • AA:解けないと周りの受験生とかなり差がついてしまう問題
  • A:解ければとりあえず数学が足を引っ張ることはない,という難度の問題
  • B:解けると周囲に対してやや優位に立てるが,解けないとやや不利になる問題
  • C:数学が得意なら正答が狙える難度で,解けなくても困らないが,解けると大きく優位に立てる問題
  • D:難易度が高すぎて点数と釣り合わない,いわゆる「捨て」の問題

であることを大まかに表しています.

大体『大学への数学』より(受験生に)厳しい評価で,『京大の理系数学27ヵ年』よりは甘い評価かなと思います. 数学が苦手な人は最低限Aの問題を確実にBの問題をできるところまで,数学が得意な人はCの問題まで完答するのが目標かなと思います. 難易度Dの問題はどんなに数学が得意な人でも部分点狙いが現実的でしょう. 個人的にはこの難易度の出題は作問者の判断ミスだと思っています.

各大問の解答の方針と講評

大問ごとの講評です.

第一問 積分 (AA15), 30点

第一問の解答・解説記事一覧

概要 (第一問)

積分の問題です.

有名な性質なので知っている人も多いかもしれません.

方針 (第一問)

置換積分してから部分積分すると$I$が求まります.

講評 (第一問)

計算したことがある人は少ないと思うのですが,もしいたらすみません.

ただ,京大入試の第一問では $$ \int_0^\frac{\pi}{4} \frac{\mathrm{d}x}{cos x} $$ の計算をさせることもあった (2019年第一問問二(2)) ので,既知の問題が出題される可能性は十分あると思います.

簡単すぎる気もしますが第一問なのでこの程度でも大きな問題はないでしょう (参考:2015年第一問など).

でも,小問集合にした方が良かったかもしれません.

第二問 図形の論証 (A15), 30点

第二問の解答・解説記事一覧

概要 (第二問)

空間図形の問題です.

解くための道具は自分で選んでください.

方針 (第二問)

適当に頂点に名前を付けて,ベクトルで解くのが比較的楽だと思います.

座標でも解けますし,初等幾何で解くこともできます.

コメント (第二問)

この手の問題は京大入試ではよく出てきます.

京大入試ではまだこの構図は出題されていませんが,本問ももしかしたらやったことがある人がいるかもしれません.

例えば,塾のテキストや,予備校の模試の問題では同じ構図の問題が収録されている可能性も高そうです.

ところで,この問題の$T'$のような多面体のことを双対多面体といいます.

面を頂点に取り替えたものに相当します.

正四面体の双対多面体は正四面体ですが,立方体の双対多面体は正八面体,正八面体の双対多面体は立方体になります.

また,正十二面体の双対多面体は正二十面体で,正二十面体の双対多面体は正十二面体です.

つまり,二つ (または一つ) の多面体がペアになっています.

第三問 整数 (A20), 35点

第三問の解答・解説記事一覧

概要 (第三問)

かの有名なピタゴラス数の問題です.

中学生でも一応解けるはずです.

小学生だと「証明」という概念を持っているかどうかが一番の問題になります.

方針 (第三問)

「因数分解」,以上.

(1)は背理法で示すのがやりやすいと思います.

講評 (第三問)

(1)と(2)は一応並列の小問になっていて,簡単すぎる問題の「かさ増し」という側面もあります.

(1)と(2)の考え方はほとんど同じなので,どちらか一方が解ければもう一方も解けるはずです.

そういう意味では,両方とも誘導問題であるともいえるかもしれません.

いずれにせよ簡単な問題なので,もし試験場で出たら示せないと厳しいと思います.

雑談

有名すぎて問題としてはやったことはないと想像しているのですが,数学をちゃんと教える学校や塾に通っている人は解いたことがあるかもしれません.

と,思っていたのですが,私自身小学校時代に(2)を考えた記憶があることに気付きました.

考えたと言っても,当時は証明という概念をよく知らなかったので,それですべてだとは分かってなかった気がします笑

そういうわけで,実はかなりの人が一度は考えたことがあるのではないかとも思います.

だとすると,「入試」の問題としては不適切だということになりますね.

第四問 整数・確率 (B30), 35点

第四問の解答・解説記事一覧

概要 (第四問)

第四問は整数,しかも$n$進法と確率を組み合わせた自信作です.

あまり整数と確率の融合問題は見かけないですよね.

(1)は有名問題ですが,知らない人もいるかもしれないので小問で分割してあります.

今は一次不定方程式が明確に範囲内なので,「知らない」というのも変な話なのですが.

方針 (第四問)

(1)はユークリッドの互除法で示すか,合同式と鳩の巣原理 (部屋割り論法) を組み合わせて示すのがよくある示し方だと思います.

解答例では前者で示していますが,後者の方が(2)につながりやすい上,書きやすいと思います.

(2)は(1)を活用するのですが,そのままだと使えないので一意性も示す必要があります.

(1)を鳩の巣原理で示すと一意性も同時に示せるので,(2)の解答が楽になります.

講評 (第四問)

「p進法の九九表」と言えば伝わるでしょうか.

元ネタはそれで,(2)では表からランダムに一つの数を選んでいます.

前半は薄味な問題が多かったですが,これは後半を解く時間を設けたいという思惑によるものです.

後半は少し骨のある問題が続きます.

本問は小問で分割したこともあり,手間のかかり具合で言えば第六問以上に面倒かもしれません.

見通しは立ちやすいと思うので,総合的な難易度としては第五問,第六問の方が難しいと思います.

(1)は書きにくい論証ですが,教科書レベルなので全く書けないのはまずいです.

多少言葉足らずになってしまうのは仕方ないとも思いますが,大筋は抑えてください.

第五問 数列 (B25), 35点

第五問の解答・解説記事一覧

概要 (第五問)

数列の問題です.

京大入試だと90年代,00年代によく見かけたような,少し古い印象もします.

とはいえ,この年代の問題が再利用されることもありましたし (2020年第一問),京大入試の傾向は数十年間にわたって安定しているので,今年出題されても違和感はないと思います.

方針 (第五問)

条件が一つしかないので色々試すしかありません.

しばらく実験してみると,漸化式が得られると思うので,そこからどうにか示していきます.

$\log$をとると見通しが立ちやすいと思いますが,とらなくても解答できます.

講評 (第五問)

それなりに難しいとは思いますが,実験癖さえあれば十分解答可能なはずです.

$a_n$が具体的に表せないので存在だけ証明していますが,逆関数の合成として表すことはできます.

第六問 図形の論証 (B30), 35点

第六問の解答・解説記事一覧

補足後

補足前

概要 (第六問)

図形の論証問題です.

「垂線の足」という表現は最近,教科書会社で自主?規制されているようなので,数研出版で採用されていた「垂線の交点」という表現を使いました.

普通に「垂線の足」と書きたいですし,解答では今後も使用予定ですが,さすがに教科書にない用語を模試の問題文で使うわけにはいかないですね.

方針 (第六問)

初等幾何,座標どちらでも解答可能です.

共円問題ということもあって,初等幾何なら反転,座標なら複素数平面を使うのが有効ですが,どちらも使わなくても証明できます.

初等幾何で示す場合は凸四角形の場合と凹四角形の場合があることに注意する必要があります.

座標で示す場合は場合分けが要らないので,初等幾何でも示せるにもかかわらず,かなり有力です.

ただし,対角線が座標軸になるようにしないと,計算量が大変なことになります.

座標で示す場合は最初の設定が肝心です.

座標で表した後は円周角でも方べきの定理でも好きなように示せばいいと思いますが,複素数を使うと対角の和が$\pi$となることが簡単な計算で示せます.

講評 (第六問)

それなりに有名な定理のはずです.

例えば,このpdfファイルでは凸四角形の場合ですが,Theorem 3として紹介されています.

http://forumgeom.fau.edu/FG2012volume12/FG201202.pdf

初等幾何で示す場合はこのpdfの証明が参考になると思います.

なお,問題不備があったので途中で補足しています.失礼しました.

当初反転で考えていたので,普通直線と円が区別されるということを忘れていました.

※反転では直線も円と考えるほうがうまくまとまる

ちなみに,凸四角形だと直線にならず,凹四角形の場合だけ直線になることがあります.

一応複素数の問題のつもりですが,別に複素数で示す必要はありません.

独り言

元々は過去作中心でストックを消費する予定だったのですが,完成したときには第六問以外新作になった上,ストックも逆に増えてしまいました.

第六問は問題不備があって補足したので,結局ストックそのままの問題は一問も採用されなかったことになりますね笑

次回は8/22公開予定の東工大模試ですが,早ければ9月初旬にももう一つ公開できそうです.

おそらくどこの大学の入試も模さない,「無冠模試」になると思います.

理学部特色と東工大一般の中間くらいの難易度の問題群を予定しています.

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過去の自作模試の問題・解答です.

模試サンプル (没問題集)

令和3年度私擬京大入試

このブログの全記事の一覧を用意しました.年度別に整理してあります.

過去問解説記事一覧【年度別】

自作の京大模試です. 6問構成で試験時間150分です. 問題ファイルは以下のリンクからダウンロードできます.

問題ファイル

以下では問題の解説をしますので,問題を解こうとしている方は注意してください.

解答例は以下のリンクから閲覧可能です.

概要

未発表の過去作を集めて自作の模試を作るシリーズ第一弾です. 今回の模試『私擬京大入学試験』は京大模試です.

本模試の大問構成,分野,このブログでの難易度評価は以下のようになっています.

自作京大模試の難易度評価

  1. 整式(AA15),30点
  2. 図形の論証(A20),30点
  3. 数列(B20),35点
  4. 確率(B20),35点
  5. 弧長(C35),35点
  6. 整数(B25),35点

自作問題なので,いつも以上に難易度評価に製作者の主観が混じる可能性があることには注意です.

難易度はここ数年で易しめの年の京大入試程度だと思います.

2017年京大理系数学のような,題意や結論はつかみやすいけど,議論を正確に進めるのが難しい,という試験を目指して作っています.

六問中五問が証明問題というかなり偏った出題ですが,京大入試は割とこのような年もあります.

さすがに五問証明問題の年は前期試験だと$1991$年,後期試験だと$2000$年までさかのぼらないとありませんが,半分以上証明問題の年ならかなりあります.

また,六問ともあまり典型とは言えない問題なので,図を描いたり特別な値を試してみたりと,実験をしてみることが大切といえそうです.

難易度の比較用として,2020年京大前期の各大問の分野と,このブログでの難易度評価を記載しておきます.

2020年の難易度評価

  1. 複素数(A20),30点
  2. 整数(A25),30点
  3. 図形の論証(B25),35点
  4. 整数(C30),35点
  5. 場合の数(B20),35点
  6. 求積(A25),35点
難易度表記の説明 カッコ内の難易度表記はAA,A,B,C,Dの五段階による難易度評価と,演習する際の標準的な解答時間(五分刻み)です. 試験場では様々な要因により,ここに書いてあるよりも苦戦すると思います.

難易度評価は,それぞれ

  • AA:解けないと周りの受験生とかなり差がついてしまう問題
  • A:解ければとりあえず数学が足を引っ張ることはない,という難度の問題
  • B:解けると周囲に対してやや優位に立てるが,解けないとやや不利になる問題
  • C:数学が得意なら正答が狙える難度で,解けなくても困らないが,解けると大きく優位に立てる問題
  • D:難易度が高すぎて点数と釣り合わない,いわゆる「捨て」の問題

であることを大まかに表しています.

大体『大学への数学』より(受験生に)厳しい評価で,『京大の理系数学27ヵ年』よりは甘い評価かなと思います. 数学が苦手な人は最低限Aの問題を確実にBの問題をできるところまで,数学が得意な人はCの問題まで完答するのが目標かなと思います. 難易度Dの問題はどんなに数学が得意な人でも部分点狙いが現実的でしょう. 個人的にはこの難易度の出題は作問者の判断ミスだと思っています.

各大問の解答の方針と講評

第一問 整式(AA15),30点 解答例(pdf版)

問題の概要と方針

まずは実験してみましょう. $f'(x)$が$f(x)$で表せるので,$n$階導関数は$P_{n - 1}(x)$と$f(x)$で表せます.

コメント

シグモイド関数を題材とした論証の基本問題です.

実験すれば数学的帰納法で示すことを思いつくでしょう.

第一問ということで簡単な問題ですが,解法がすぐに思いつかないような問題を前にしたとき試行錯誤できるか,ということと,正確に論証を進められるかということを見るという狙いもあります.

まあ,入試演習に慣れている人には初見で数学的帰納法を思いつかれそうですが.

第二問 図形の論証(A20),30点 解答例(pdf版)

問題の概要と方針

まずは$n = 1,2$のような小さな値で実験してみると良いでしょう. 何らかの法則が見えると思います.

コメント

$P_k$は$n$によって違う点を意味するので$P_{n,k}$とすべきでしたね…… まあ分かるだろうということで訂正はしません.

取りつくし法を題材とした問題です. 今で言う$\frac{1}{6}$公式を,アルキメデスが発見した際に用いた方法で確認してみようという趣旨です.

この問題では囲まれた面積が$\frac{(\beta - \alpha)^3}{6}$以上であることを示しています.

接線で囲まれた領域も計算すれば,はさみうちの原理により$\frac{(\beta - \alpha)^3}{6}$に収束することが示せます.

第三問 数列(B20),35点 解答例(pdf版)

問題の概要と方針

複素数の積の形に見えた人はその直感を信じて試してみましょう. 見えなかった人もやっぱり解法がすぐには思いつかないはずなので色々試すしかありません.

結局のところ実験してみないとよくわからないという問題でしょう.

コメント

数列の問題ですが,連立漸化式というより点列の問題です.

複素数列とみなすと等比数列になるようになっています.

もちろんそこに気づかなくても解けますが,気づくとかなり見通しが良くなるでしょう.

2000年代の京大入試風味ですが,2020年京大入試では2003年京大後期の複素数の問題がほぼそのまま出題されたので,この頃の問題がさらに再び出題されてもおかしくはありません.

それくらい複素数で出題しようとすると問題のパターンが限られます. 高校範囲の複素数ってやれることがかなり限られていますからね.

実は元々入れようとしていた問題を急遽没にした結果,新たに作った問題だったりします.

第四問 確率(B20),35点 解答例(pdf版)

問題の概要と方針

この問題も実験をしてみると分かりやすいです. $n$回以内に勝利できる確率が任意の$n$で$\frac{5}{7}$未満であることを示しましょう.

コメント

硬貨ではなくじゃんけんであれば小学生くらいの頃に似たようなことをやっていた人も多いのでは?

少し変わった問題ですが,実験してみたり,実際に確率を求めてみようとしてみれば方針は立てられると思います.

書き方に困ることはあるでしょうが,後半の問題の中では解きやすい部類に入ると思います.

第五問 弧長(C35),35点 解答例(pdf版)

問題の概要と方針

(1)  基本問題です. このような関数はいくらでもあるので$1$つ求めよ,となっています. 適当にパラメータ表示してやればよいでしょう.

(2)  (1)は(2)の誘導に一応なっていますが,乗る必要は必ずしもありません. どちらかというと(1)と(2)は並列的で,合わせて(3)を考えるような構成になっています.

正直(1)よりも簡単です.

(3)  (1)と(2)の両方を合わせて解きます. $a = 1$で最小になることはすぐに予想がつくので,不等式で評価することを考えます. (1)の積分表示で(2)を考えてみれば上手く不等式を作れるでしょう.

コメント

(1),(2)は(3)の誘導に過ぎず,入試問題としては差が出ない問題です. 配点は$5$点,$5$点,$25$点くらいが適正だと思います.

(1)と(2)を一つの小問にしても良かったかもしれません.

なお,この問題は,「面積が等しい図形の中で周が最小なのはどのような図形か」という問題の特別な場合です.

第六問 整数(B25),35点 解答例(pdf版)

問題の概要と方針

角を考えるのに必要なのは辺$AB,AC$であって,三点の座標ではありません. ベクトル的に考えられれば見通しが立ちやすくなるでしょう.

コメント

無理数であることを示せ,という問題は背理法で示すことが多いですが, 有理数であることを示すときは具体的な表式を考えたくなります.

この問題の場合は加法定理によって表式が得られます. ただし,$\tan \theta$は定義できない点が存在するのでそこに注意する必要があります.

各大問の解説記事

このブログの全記事の一覧を用意しました.年度別に整理してあります.

過去問解説記事一覧【年度別】

自作模試のサンプルです. 6問構成で試験時間150分の京大模試になっています. 問題ファイルは以下のリンクからダウンロードできます.

問題ファイル

以下ではサンプル問題の解説をしますので,問題を解こうとしている方は注意してください.

解答例は以下のリンクから閲覧可能です.

概要

没問題を集めて自作模試のサンプルを作りました.この記事ではサンプルの解説をします.

自作模試の解説ページのサンプルですね.

さて,サンプルも$6$問構成になっているので京大入試や模試のように難易度評価ができます.

模試サンプルの大問構成,分野,このブログでの難易度評価は以下のようになっています.

模試サンプルの難易度評価

  1. 図形の論証(AA10),30点
  2. 図形の論証(B20),30点
  3. 軌跡・領域(C25),35点
  4. 確率漸化式(A20),35点
  5. 面積(B35),35点
  6. 整式(B20),35点

自作問題なので,いつも以上に難易度評価に製作者の主観が混じる可能性があることには注意です.

難易度はここ数年で易しめの年の京大入試よりもさらに少しだけ易しめです.

ただし,第一問はかなり易しく,一方で第三問は上手く座標等を決めないとかなり厳しいです.

多少難易度にばらつきがあるという点では2018年入試に近いかも?

計算量も結構ばらつきがあります.大問1,2,6はほとんど計算せずに解けますが,3,4,5の計算量は多めです.

前半三問がすべて円がらみだったりと,没問題の寄せ集めなのでなんとなくちぐはぐな感はありますが,意外と模試として成立しているのでは?

サンプル問題との比較用として,2020年京大前期の各大問の分野と,このブログでの難易度評価を記載しておきます.

2020年の難易度評価

  1. 複素数(A20),30点
  2. 整数(A25),30点
  3. 図形の論証(B25),35点
  4. 整数(C30),35点
  5. 場合の数(B20),35点
  6. 求積(A25),35点

なお,カッコ内の難易度表記はAA,A,B,C,Dの五段階による難易度評価と,演習する際の標準的な解答時間(五分刻み)です.試験場では様々な要因により,ここに書いてあるよりも苦戦すると思います.

難易度の目安ですが,それぞれ

  • AA:解けないと周りの受験生とかなり差がついてしまう問題
  • A:解ければとりあえず数学が足を引っ張ることはない,という難度の問題
  • B:解けると周囲に対してやや優位に立てるが,解けないとやや不利になる問題
  • C:数学が得意なら正答が狙える難度で,解けなくても困らないが,解けると大きく優位に立てる問題
  • D:難易度が高すぎて点数と釣り合わない,いわゆる「捨て」の問題

というつもりで書いています.大体『大学への数学』より(受験生に)厳しい評価で,『京大の理系数学25ヵ年』よりは甘い評価かなと思います.数学が苦手な人は最低限Aの問題を確実にBの問題をできるところまで,数学が得意な人はCの問題まで完答するのが目標かなと思います.難易度Dの問題はどんなに数学が得意な人でも部分点狙いが現実的でしょう.個人的にはこの難易度の出題は作問者の判断ミスだと思っています.

各大問の解答の方針と講評

第一問 図形の論証(AA10),30点 解答例(pdf版)

問題の概要と方針

必要条件なのは明らかです. 十分生を示すのがポイントですが,これも簡単.

適当な$4$点を選びそれが同一円周上にあることから,$C$が円であることを示すといいでしょう. おそらく,長軸上と短軸上の$4$点を選ぶのが一番簡単です.

没になった理由

簡単すぎるため.

コメント

もともとは(*)のような性質を示そうという問題を作ろうとしていました. 結局それは諦めましたが,この形式なら試験問題になるだろうということで作成. 少し易しすぎますが,正確に論述する能力を見ることはできるかもしれません. 難しい大問が多い年の大問1くらいにはなれるかも?

第二問 図形の論証(B20),30点 解答例(pdf版)

問題の概要と方針

反転変換という非常に有名な変換に関する問題です. 問題文で$3$点が与えられていますが,それらが通る円で考えた方がずっと解きやすいです. $3$点が通る円の方程式を変形すると結構簡単に示せます.

没になった理由

有名すぎるため. また,オリジナリティーに欠けるため.

コメント

反転は問題を解く上でとても便利な変換ですが,こういう性質自体を聞かれたときはその性質を使わずに示さなければなりません. 循環論法になってしまいますからね. この問題はそれを言うために作った問題ですが,twitter上に載せる自作模試の問題としてはオリジナリティーに欠けるので……

ちなみに,著作権は数学の問題自体には発生せず,問題文や小問の分け方,大問の位置や配点のオリジナル性に発生するので,この問題も一応私の自作問題ということになります. さすがにそう言う気にはなれませんが.

第三問 軌跡・領域(C25),35点 解答例(pdf版)

問題の概要と方針

例えば$\overrightarrow{PQ}$を$x$軸に取ると変数を$3$つに減らせます. 動点が$3$つもあるので何かしら固定しないと計算量が大変なことになります.

没になった理由

今年の一橋大学の入試問題に,類似の出題があったため.

コメント

この問題を作ったのは何年も前なのでパクリではありません! 後だしで言ってもしょうがないですけど.

実は,この問題の類題が一橋で出題されたのが自作模試を公開しようと思ったきっかけだったりします.

もともと第三問は「模試の問題」として作ったもので,入試の予想問題として作ったわけではありません. とにかく受験生の学力だけは正確に測れれば,模試の問題としては十分機能する,という考えで作った一連の問題の一つです. 第二問もそのシリーズだったり.

第二問は上手く問題を一般化できるか,議論を正確に進められるかという論述力を, 第三問は座標の取り方や図形のとらえ方,計算量を減らす工夫などを見ようとしています.

没問題の中では一番か二番に気に入っている問題だったので残念.

第四問 確率漸化式(A20),35点 解答例(pdf版)

問題の概要と方針

確率漸化式の基本問題です.

没になった理由

面白みに欠ける上,オリジナリティーも少ないため.

コメント

よくある確率漸化式の問題です. $3$で割った余りに着目して,連立漸化式や確率行列で解くと良いでしょう. 漸化式を立てずに解けるか,と言われると結構厳しい気がします.

第五問 面積(B35),35点 解答例(pdf版)

問題の概要と方針

(1)  絶対値を不等式で評価します. 上手く$c$を選ぶことで$h(x)$は消去できます.

(2)  (1)で示した結果を使います. (1)では存在を言っただけですが,(2)ではそれを実際に求め,不等式の等号を実現する$m$を見つけます.

没になった理由

2017年の京大の入試問題をもとにしているため.

コメント

没問題の中では第三問と同じくらい気に入っています. (1)は(2)を解くための単なるヒントです. (1)を示さなくても,(2)を不等式で求めることはできます.

もちろん誘導に乗らなくても,(2)は普通に解けます. 絶対値を外す場合は交点の座標を具体的に求められないことに注意です. 交点の存在を示して適当に文字を置くと良いでしょう.

第六問 整式(B20),35点 解答例(pdf版)

問題の概要と方針

$ax^2 + bx + c$の因数は$1$の三乗根です. 因数を$\alpha,\beta$とでもおいて,$a\alpha^2 + b\alpha + c$に$\alpha$をかけてみるとある性質に気づくと思います.

条件を満たすような$ax^2 + bx + c$は定数倍を除いて$3$つしかないので,場合分けしてすべての場合について示す手もあります.

没になった理由

今年の東大の問題にも$ax^2 + bx + c,bx^2 + cx + a,cx^2 + ax + b$の$3$つの二次式が使われていたため. また,すでに入試問題として出題されている可能性があるため.

コメント

問題文をきちんと読めば全く別の問題だと気づくと思いますが,パクリだと言われたくないので没に. この問題も結構気に入っています.

これと同様の問題はすでに入試で出題されているのと思うので,真の自作問題と言えるかは微妙なところです.

各大問の解説記事

このブログの全記事の一覧を用意しました.年度別に整理してあります.

過去問解説記事一覧【年度別】

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