数学アマノジャク

数学の入試問題の解説をしたいブログ. 「暗記数学」に対抗して「考える数学」を広めていきます. 現在は京大入試の過去問解説を中心に鋭意更新中.

カテゴリ: 講評

概要

※この記事は当ブログ管理人一個人の私的な見解です.

※数学のみの講評です.いわゆる解答速報ではない上,他の科目はやりません.

この記事は2021年東工大一般入試の,数学の問題についての雑感です. いわゆる講評で解答速報ではありません.

また,略解は一部載せていますが,例年と違って他者の確認を経ていないので,自分で検証できる人だけ参考にしてください.

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去年の東工大入試の講評

目次

設問の難易度等

まずは設問別の難易度評価から.

ただ,他年度との比較はまだ行っていませんので,とりあえず「単年度」でのおおまかな難易度評価だけざっと述べておきます.

そういう訳で,これまでの難易度評価との互換性はありません.

以下では,他の設問と比べて易しい問題は「易」,難しい問題は「難」,残りを「標」としています.

設問の分野・配点,設問の難易度の目安

  1. 場合の数・数列, 60点
  2. 平面図形, 60点
  3. 整数, 60点
  4. ベクトル, 60点
  5. 軌跡・領域・微積分, 60点

※いつもより主観的なので注意.

試験全体の難易度

どの大問も(1)はかなり簡単で,時間もほとんどかからないと思います.

一方,第二問,第三問の(3)が比較的難しめです.

第一問(2)や,第三問(2),第四問(3)も気づけば簡単ですが「ハマる」ときがありそうな問題です.

どれもそこまで難しい問題ではありませんが,全てを真面目に解こうとするとかなり忙しくなります.

なお,「易」のなかでは第五問(2)が難しめです.逆に「標」の第四問(2)は易しめです.

残りの問題はそれこそ「標準的」と言えそうな問題ばかりで,多少の実験,観察,計算によって正解しうる問題です.

試験全体の構成

全体的に「東工大入試としては」難しい問題が見られない一方で,小問数がかなり多いという印象を覚えました.

今年はコロナの影響で学力低下の懸念があったので,その備えだったかもしれないと予想していますが,見当はずれかもしれません.

標語的には「2020年の試験から,難易度をそのまま問題数だけ増やした試験」といった感じでしょうか.

東工大として比較的低難度な問題をたくさんという構成なので,要は他の一般的な大学の入試のようになったということです.

長試験時間,少大問数なのは変わらないので,名大入試的な構成と言った方がいいかもしれませんね.

一方,分野は例年とあまり変わらない印象です.

ただし,複素数の出題はありませんでした.第二問(3)を複素数で解くことは一応可能ですが,あくまで「不可能ではない」という程度の話で,出題されなかったとみるのが素直だと思います.

総評

問題数が多い忙しい試験,なようで意外とそうでもありません.

確かに,全ての小問を解こうとすると (つまり,満点を狙おうとすると) 時間的にかなりタイトです.

ただ,難しい問題を無理に解こうとしなければ,易しい問題が多かったのもあって逆にゆとりを持って解答できたはずです.

ゆとりがあるということは,残った時間で何問か解きうるということなので,満点を取りたい人以外は難易度,時間,分野のどれも例年と大きく変わらない試験だったと予想しています.

まあ,さすがに去年よりは難しいと思いますが,例外は去年の方です.

各大問の解答の方針と講評

大問ごとの概要です. 略解は参考程度に.

第一問 場合の数・数列, 60点

第一問の解答

概要 (第一問)

総和に関する不等式の問題です.

(1)はただの誘導で,(2)が主眼になっています.

方針・略解 (第一問)

(1)は各桁に$9$を含まない$k$桁の正の整数の場合の数なので, $a_k = 8 \cdot 9^{k -1}.$

(2)は(1)を参考に各桁の整数ごとに別々に和をとって不等式で評価することを考えます. すると, $$ \sum_{n = 1}^{10^k - 1} b_n = \sum_{k = 1}^{10} b_n + \cdots + \sum_{k = 10^{k - 1}}^{10^k - 1}b_n \leqq 8 + \cdots + \frac{8 \cdot 9^{k - 1}}{10^{k - 1}} < 80 $$ のようにして証明できます.

講評 (第一問)

$\displaystyle \sum_{k = 1}^\infty \frac{1}{k}$は発散してしまうのに,この級数は収束する,という面白い問題です.

定義からして真面目に計算できそうに見えないので不等式を使うわけですが,その使い方がポイントです.

誘導は要るのだろうかと解いているときは思いましたが,無ければそれなりに難しくなるのでいいバランスなのかもしれません.

(2)は程よい難易度で,多少の試行錯誤から方針を立てられると思います.

第二問 平面図形, 60点

第二問の解答

概要 (第二問)

楕円上の四角形を考察する問題です.

(1)は誘導,(2)も一応(3)の誘導になっていますが,そこまで強いつながりではありません.

方針・略解 (第二問)

(1)

楕円の式に$y = ax + b$を代入した $$ \frac{x^2}{4} + (ax + b)^2 = 1 $$ が相異なる2実解を持つことが必要十分条件になります. $$ 4a^2 - b^2 + 1 > 0. $$

(2)

(1)で$P, Q$の$x$座標 (または$y$座標) をほぼ求めているのでそれを使うのが簡単です.

$l, m$の傾きが$a$であることから,$P, Q$の$x$座標の差と,$S, R$の$x$座標の差が等しいことが条件と言えて, 結局 $$ c = -b $$ が条件となります.

(3)

方針①

(2)で各点の$x$座標を求めているので,そのまま$P,Q,R,S$の成分表示で考えていきます. $$ \begin{aligned} \overrightarrow{PQ} \cdot \overrightarrow{PS} &= 0 \\ \left| \overrightarrow{PQ} \right| &= \left| \overrightarrow{PS} \right| \end{aligned} $$ となることが$PQRS$が正方形となる条件なのでこれを実際に計算します.

少し汚いですが計算を進めると,最終的に各辺が座標軸と平行な,$\left(\pm \frac{2}{\sqrt{5}}, \pm \frac{2}{\sqrt{5}}\right)$を頂点とする正方形だけが答えと分かります.

方針②

(2)から$l, m$が原点について点対称となっていることが分かるのでこれを活用します. 楕円$E$も原点について点対称なので,$P$と$R$,$Q$と$S$は点対称な点で,対角線は原点で交わります.

正方形とは長さが等しい対角線が中点で直交する四角形のことなので,楕円上の正方形の$4$頂点は$1$点の極座標表示$r, \theta$だけで表せることが分かり,$4$点全てが楕円上に乗るという条件から方針①と同様の正方形が得られます.

講評 (第二問)

(1), (2)は比較的易しめです.

(3)は他の大問の設問と比較しても難しめです. 基本的には,他の問題を解いてから最後に臨む問題になると思います.

ただし,例えば方針②のような計算量の少ないやり方を思いついて,意外とすんなり解けたということはありうると思います.

第三問 整数, 60点

第三問の解答

概要 (第三問)

二項係数に関する整数の問題です.

(1), (2)ともに誘導です.

方針・略解 (第三問)

(1)

二項係数の定義にしたがって実際に計算.

(2)

漸化式 $$ a_{n + 1} = \frac{2(2n + 1)}{n + 2}a_n $$ が得られれば,数学的帰納法で証明可能.

(3)

$n = 2, 3$が答え. これは簡単に実験で予想できるので,この証明を目指します.

方針①

$n \geqq 5$で$a_n$が合成数であることを証明します. $n = 1, 2, 3, 4$は具体的に計算.

(2)の結果と上の漸化式を使うと $$ a_n > 2n + 1 $$ と示せます. 一方で,$a_n$を素因数分解すると$2n$未満の素数しか含まないことが分かるので,合成数であると示せます.

講評 (第三問)

~~が素数となる○○をすべて求めよ,という形式の問題を本当によく見かけるようになったな,というのが最初に見たときの感想でした. どうでもいいですね.

さて,この問題はよくある$3$なり$5$の倍数であることを示してささっと解けてしまう問題とは少し違って,合成数であることだけが示せます.なにか具体的な素数$p$の倍数というわけではありません.

偶数なように見えるかもしれませんが$a_7$は奇数です.

本問の(3)と,第二問の(3)が最も難しい設問ということになるだろうと思います.

二項係数ということで既に整数の積 (と商) の形になっているのでそれを使う訳ですが,略解の方針にしろ他の方針にしろ あまり見かけない論法だと思うのでなかなか思いつきにくいと思います.

なお,(1)と(2)はそう難しくないので,(2)まで解くのが目標といったところでしょうか.

(3)は予想だけして,証明は余裕があればといったところ.

第四問 ベクトル, 60点

第四問の解答

概要 (第四問)

ベクトルの問題です. $\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}$があたかも一つのベクトルのようになっているというのがポイント.

(1)は(2)の誘導で,(3)は(2)の続き,あるいは具体例です.

どちらかといえば(2)がメイン.

方針・略解 (第四問)

(1)

実際に計算して, $$ k = -2. $$

(2)

$\vec{a} + \vec{b} + \vec{c}$をまとめて一つのベクトルとみてみると, 半径$3$の球内を動くベクトルと球面を動くベクトルとしてとらえられます.

後は図形的に見ても数式だけで処理してもあまり変わらず, $$ M = \frac{9}{2}. $$

(3)

$D$の位置と(2)の結果から$\vec{a} + \vec{b} + \vec{c}$(重心とみてもよい) が決まりますが, $C$の位置から$|\vec{a} + \vec{b}| = 2$と分かります.

つまり,ただ$1$点に決まってしまって, $$ \vec{a} = \vec{b} = \begin{pmatrix} \frac{7}{8} \\ -\frac{\sqrt{15}}{8} \\ 0 \end{pmatrix}. $$

講評 (第四問)

要は(1)は(2)の誘導になっているわけですが,ここに誘導がつくのは少し驚きました.

この誘導により,(2)がかなり見通しやすくなっています.

個人的には(2)も「易」とするか迷いましたが平均点は低そうな予感がしたので「標」ということにしておきました.

(3)は$1$点に決まってしまうので実はそこまで難しくはないのですが,(3)はかなり特別な状況で基本的には円になるので,先に円が見える逆に見えにくくなるかもしれません.

何かのはずみで$|\vec{a} + \vec{b}|$を計算してしまえば一瞬で氷解します.

第五問 軌跡・領域・微積分, 60点

第五問の解答

概要 (第五問)

恒例の積分の問題です.

計算量はありますが,ほとんど一本道です.

方針・略解 (第五問)

(1)

円周の下半分$y = a - \sqrt{a^2 - x^2}$が常に$x^2$より上にあることが条件で,計算すると, $$ a \leqq \frac{1}{2}. $$

(2)

同様に$x^2 - x^4$より上にあることが条件で,計算すると結局同じ $$ a \leqq \frac{1}{2} $$ が答え.

計算するときは,$X = x^2$と置換すると見やすくなります.

(3)

まずは円$C$を無視して4次関数の上側の回転体の体積を求め,そのあと$C$の回転体の分だけ「くりぬき」ます.

4次関数の上側下側合わせた回転体 ($0 \leqq y \leqq \frac{1}{4}$),つまり円筒の体積は $$ V_1 = \frac{\pi}{8} $$ と表せ,4次関数の下側の回転体の体積は $$ V_2 = \frac{\pi}{12} $$ と表せます.この結果から,4次関数の上側の回転体の体積は $$ V_1 - V_2 = \frac{\pi}{24} $$ と求まります.

一方,円$C$の回転体 (球) の$y \leqq \frac{1}{4}$の部分の体積は$a = \frac{1}{8}$を境に場合分けして, $a \leqq \frac{1}{8}$のとき $$ V_3 = \frac{4}{3}\pi a^3, $$ $a \geqq \frac{1}{8}$のとき $$ V_3 = \frac{a}{16}\pi - \frac{\pi}{192} $$ となります.

これらを合わせ,求める体積は $a \leqq \frac{1}{8}$のとき $$ V = V_1 - V_2 -V_3 = \frac{\pi}{24} - \frac{4}{3}\pi a^3, $$ $a \geqq \frac{1}{8}$のとき $$ V = V_1 - V_2 -V_3 = \frac{3}{64}\pi - \frac{a}{16}\pi $$ と計算できます.

講評 (第五問)

(1)は(2)の誘導なのだと思いますが,ほぼボーナス問題. 境界は曲率円になっていますが本問では特に意味はありません.

(2)も解き方は(1)とほとんど変わらず,ただ少し計算量が増えているのみです.

計算量は多少ありますが,そもそも$x \ll 1$なら$x^2 - x^4$と$x^2$はほぼ同じグラフですからほとんど結果は見えています.

なお,このことを利用して$a = \frac{1}{2}$の付近だけを検討するという論法も考えられます.

$a = \frac{1}{2}$で含まれるなら$a \leqq \frac{1}{2}$でも含まれることはすぐに示せるので,$a > \frac{1}{2}$では含まれず,$a = \frac{1}{2}$で含まれることを示せばほとんど終了です.

(3)は(2)までが分からなくても計算可能で,関連はあっても解く際には独立した問題です.

$V_3$は$y$軸,$V_2$は$x$軸で計算すると比較的計算しやすいと思います.

この大問はやることが分かりやすく一直線なので,時間をかければ確実に得点できます.

計算速度次第ですが優先したい問題の一つではあるでしょう.

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去年の東工大入試の講評

このブログの全記事の一覧を用意しました.年度別に整理してあります.

過去問解説記事一覧【年度別】

概要

自作の模試を作るシリーズ第四弾です.

今回の模試『令和3年度私擬無冠模試』はどこの大学も冠さない,ただの自作模試です.

東工大入試と京大特色入試の中間くらいの難易度だと思うので,忙しい受験生は避けた方が無難です.

時間のゆとりがあるときに,やりたい問題だけやってみてください.

5問構成で推奨試験時間240分です.

問題ファイルは以下のリンクからダウンロードできます.

以下では解答例を載せているので,問題を解こうとしている方は見ない方が良いと思います.

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過去の自作模試の問題・解答です.

これらは難易度を一般入試に合わせているので,本模試より問題演習に適切な難易度かもしれません.

京大模試サンプル (没問題集)

令和3年度私擬京大入試

令和3年度後期私擬京大入試

令和3年度私擬東工大入試

目次

模試の難易度評価

本模試の大問構成,分野,配点,難易度評価は以下のようになっています.

無冠模試の分野・配点

  1. 整数・ベクトル (C60), 40点
  2. 微積分 (B35), 40点
  3. 代数 (B40), 40点
  4. ゲーム理論 (B60), 40点
  5. 数列 (C45), 40点

模試全体の構成

どこの大学も模さないということで,一般入試ではあまり見かけないような問題が中心です.

高校範囲の知識で解けますが,入試で出てきたら「新傾向」と言われるような分野や,一般入試では少し難しかったり,面倒だったりする問題が多めです.

模試全体の難易度

時間内に解こうとすると,第一問,第四問が鬼門になると思います.

第一問は上手く思いつけば短時間で解答できますが,なかなか思いつきにくいと思います.

対照的に,第四問は作業量が多いだけで,根気よく実験していけば,どちらの小問も特別な発想なく解答可能です.

一方.第二問・第三問は一般入試レベルの問題なので,まずはここから取り組むとやりやすいでしょう.

第五問も実験すれば予想くらいは立てられると思います.

まずは第二問,第三問,第五問の予想までやってみて,その後に第一問,第四問,第五問の証明でできそうなものからやっていくという流れでしょうか.

総評

$4$時間で全問出来る人は間違いなく凄いですが,$3$問程度の正解でも一般受験層のかなり上位に位置しているのではないかと思います.

「面倒」な問題が多いですが,第一問以外は手が出る問題だと思うので,模試として考えれば$1, 2$問正解するのが目標でしょうか.

各大問の解答の方針と講評

大問ごとの概要です.

第一問 整数・ベクトル (C60), 40点

第一問の解答

概要 (第一問)

ベクトルと整数の融合問題です.

この問題はR. L. Graham,B. L. RothschildとE. G. Strausが1974年に発表した定理を基にしています.

本問では,その定理で$n= 2$とした場合を誘導付きで考えています.

なお,元の定理はThe American Mathematical Monthlyに掲載された,"Are there $n + 2$ Points in $E^n$ with Odd Integral Distances?"に載っているので興味があれば参照してください.

方針 (第一問)

(1)は実際に$(2k + 1)^2$を計算すればすぐにわかります.

(2)では(1)が誘導になっているので,まずは(1)の結果を(2)で使いやすいように適当に一般化しておくと良いでしょう.

その後は,背理法を使うと比較的易しく解けます.

講評 (第一問)

誘導も付けたのでそう難しくないだろうと思っていましたが,見込みが外れたようです.

(2)は直接示すのはしんどいので,背理法で示すことになると思いますが,その次の手が見えにくかったかもしれません.

背理法の仮定が,$A, B, C$が同一平面上にあるということを意味するとさえ見抜ければ,力技でも解答可能です.

解答例では,内積と角を利用しています.

原案では誘導無しで

「どの$2$点間の距離も奇数であるような$4$点は同一平面上にないことを示せ」

という問題文を考えていたので,やさしくするための誘導のせいで余計難しくなってしまったかも?

第二問 微積分 (B35), 40点

第二問の解答

概要 (第二問)

フレネル積分を題材とした微積分と数列の問題です.

他の問題と比べると,一番一般入試の問題に近い問題だと思います.

方針 (第二問)

$s = t^2$のように置換するとかなり見えやすくなります.

あとはそれぞれの小問の目標に向かって良い評価を探していきます.

講評 (第二問)

(1)と(2)は似た考え方をしますが並列的な構成になっているので,どちらを先に解いても大丈夫です.

片方が解ければもう片方もそれなりにやさしく解けるようになっています.

(2)の不等式評価の方がひねりが少なくて多少解きやすいかもしれません.

この大問からもう少し考察すると,有界な単調済列が収束することさえ認めれば,$\displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n$と$\displaystyle \lim_{n \to \infty} b_n$が存在して,両者が等しいことを示せます.

すると,値は求まりませんが,フレネル積分の$x \to \infty$の極限が存在することも容易に示せます.

値を求めたい場合は複素関数として考えて,留数定理を用いるのが有効です.

第三問 代数 (B40), 40点

第三問の解答

概要 (第三問)

複素数と似て非なる数体系である「分解型複素数」が題材です.

複素数における「極形式」に相当するものを考える問題です.

方針 (第三問)

(1)は定義にたがって計算すれば自然と示せます.

(2)はただの見掛け倒しで,簡単な領域の問題です.この問題独特の概念はほとんど必要ありません.

(3)は,ド・モアブルの定理の証明とほとんど同様に示せます.

講評 (第三問)

この五問の中だと一番簡単な問題です.

第二問と第三問は,一般入試で出題されても捨て問にはならないと思います.

手間は多少かかりますが,それも他の問題と比べればそこまで大したことはありません.

(2)では,境界は含まず$(0, 0)$だけが含まれます.

そこまで重要というわけではないですが,一応注意しながら解くといいでしょう.

第四問 ゲーム理論 (B60), 40点

第四問の解答

概要 (第四問)

かの有名な「三目並べ」です.「二人零和有限確定完全情報ゲーム」とよばれるゲームの一種になります.

分野は「場合の数」にしようかとも思ったのですが,しっくりこなかったのでそのまま「ゲーム理論」ということにしました.

「組み合わせ」なら妥当なのですが.

手間がかかるので,この手のタイプは一般入試では出題されませんが,京大特色入試のような時間にゆとりのある試験だと見ることもあります.

方針 (第四問)

(1)

「ゲーム木」の考え方が有効で,それに近いものを考えれば上手く示せます.

すべての盤面を考えると図示・場合分けだけでも大変です.

対称性を利用して似た盤面を同一視するなど,とにかく場合分けを減らすことが肝心です.

解答例では$10$程度の場合分けに抑えています.多分もっと減らせるはず.

(2)

(1)が誘導になっています.

実験してみると,(1)より少し大きい盤面では勝てることが分かるはず.

講評 (第四問)

解答例のようにたくさん図示する必要はありません.あれは手書きでやるものではないです.

書き出せばすぐ分かるのは明らかなので,場合分けが発生する個所など,要点を抑えれば十分です.

有名な題材ですが,数学の対象として考えたことのある人はほとんどいないと想像します.

最重要な$3 \times 3$がとても面倒なので練習問題としてやりにくいのだと思います.

既知の人が十分いることが想定されるので,実際の入試でも出しにくいですね.

もう少しひねったオリジナルのゲームを考えることになると思います.

第五問 数列 (C45), 40点

第五問の解答

概要 (第五問)

Wikipediaで偶然見つけた「Van Eck数列 (Van Eck's sequence)」という数列の構成ルールをいじっていたら,この数列になりました.

元々人工的な数列ですが,それをさらにいじったので極めて人工的な感じのする数列になっています.

方針 (第五問)

一般項が予想できるまで実験しましょう.

予想した後は帰納法がやりやすいと思います.

講評 (第五問)

そう難しい問題ではないと思いますが,見た目に圧倒されやすいかもしれません.

第四問の後なのも,難しく見える要因になりそうです.

実際は一般入試でも出題できる程度の難易度です.

まあまず見たことのない数列だと思うので,実験する以外ないですね.

この数列自体は一応発見されているようで,OEISには登録されています.

ただし,本問の漸化式は記述されていなかったので,未発見だったのかもしれません.

ちなみに,Van Eck's sequenceもOEISに登録されています.

(ii)の2.の部分で, $$ a_{n + 1} = 0 $$ とすればVan Eck's sequenceになります.

独り言

問題により難易度・手間が激しく異なるので,手のつきそうな問題だけ解く方が楽しめるかもしれません.

ちなみに,今回はほぼ新作です.

次の模試も考えてはいますが,10月は大手予備校の模試のシーズンなので,早くても11月の上旬になると思います.

関連記事

過去の自作模試の問題・解答です.

京大模試サンプル (没問題集)

令和3年度私擬京大入試

令和3年度後期私擬京大入試

令和3年度私擬東工大入試

このブログの全記事の一覧を用意しました.年度別に整理してあります.

過去問解説記事一覧【年度別】

概要

未発表の過去作を集めて自作の模試を作るシリーズ第三弾です.

今回の模試『令和3年度私擬東工大入試』は東工大模試です.

5問構成で試験時間180分です.

問題ファイルは以下のリンクからダウンロードできます.

以下では解答例を掲載しているので,問題を解こうとしている方は見ない方が良いと思います.

目次

模試の難易度評価

本模試の大問構成,分野,配点,難易度評価は以下のようになっています.

自作東工大模試の分野・配点

  1. 複素数 (A20), 60点
  2. 微積分 (C45), 60点
  3. 整数 (B25), 60点
  4. 微積分 (B35), 60点
  5. 確率 (B25), 60点

今回は自作のため特に主観が入りやすく,難易度はあまりあてにならないことに注意してください.

2020年の難易度評価

参考用に,2020年の東工大入試の難易度評価を置いておきます.

  1. 整数 (A20), 60点
  2. 複素数 (B30), 60点
  3. 図形の論証 (C20), 60点
  4. 求積 (A20), 60点
  5. 積分漸化式・極限 (B40), 60点
難易度表記の説明 カッコ内の難易度表記はAA,A,B,C,Dの五段階による難易度評価と,演習する際の標準的な解答時間(五分刻み)です. 試験場では様々な要因により,ここに書いてあるよりも苦戦すると思います.

難易度評価は,それぞれ

  • AA:解けないと周りの受験生とかなり差がついてしまう問題
  • A:解ければとりあえず数学が足を引っ張ることはない,という難度の問題
  • B:解けると周囲に対してやや優位に立てるが,解けないとやや不利になる問題
  • C:数学が得意なら正答が狙える難度で,解けなくても困らないが,解けると大きく優位に立てる問題
  • D:難易度が高すぎて点数と釣り合わない,いわゆる「捨て」の問題

であることを大まかに表しています.

大体『大学への数学』より(受験生に)厳しい評価で,『東工大の数学20ヵ年』よりは甘い評価かなと思います. 数学が苦手な人は最低限Aの問題を確実にBの問題をできるところまで,数学が得意な人はCの問題まで完答するのが目標かなと思います. 難易度Dの問題はどんなに数学が得意な人でも部分点狙いが現実的でしょう. 個人的にはこの難易度の出題は作問者の判断ミスだと思っています.

試験全体の構成

微積$2$問,整数$1$問,複素数$1$問と,東工大入試でよく見かけるような分野構成のつもりです.

全体を通しての計算量はそう多くありませんが,第二問を中心にある程度計算量がある問題もあります.

そこまで発想力のいる問題はありませんが,後半$3$問はある程度考える必要があると思います.

模試全体の難易度

難易度や雰囲気も近づけたつもりですが,それを判断するのは解く側なのであまりコメントしないでおきます.

公開時はちょっと簡単すぎ (2020年くらい?) な気がしましたが,その後考えを改めむしろ少し難しいかもしれないと思うようになりました.

東工大入試の難易度の振れ幅は極めて大きいので,「例年の難易度」からは大きく外れていないと思います.

総評

第一問・第三問が易しめなのでまずは先に解いて確保し,その後第二問前半,第四問,第五問のうちできるところを確保,最後に第二問を時間が終わるまでやってみるという感じでしょうか.

東工大入試は問題の重厚さと比べ,解答スペースがあまり広くないので,今回もそれに合わせて論理的に重要なところを抑えつつ,ある程度簡潔に書くと良いと思います.

各大問の解答の方針と講評

大問ごとの概要です.

第一問 複素数 (A20), 60点

第一問の解答

概要 (第一問)

とある有名な定理の証明問題です.

2018年の北大後期入試第二問の前半とほぼ同様の出題です.

作問の労を惜しんだという批判は甘んじて受けましょう.

方針 (第一問)

(1): $A_1$を求めれば,$A_2$もついでに出てきます.

複素数の積が回転に対応していることを活かしましょう.

(2): 正三角形を「夾角が$\frac{\pi}{3}$の二等辺三角形」とみることがポイントです.

そう見えれば,複素数の乗法・商法の意味を考えれば容易に示せると思います.

講評 (第一問)

第一問なので比較的易しめの問題です.

誘導も付けたのでほとんど一本道で解けると思います.

時間がかかってもあまり問題はないですが,正答はしたいところです.

第二問 微積分 ((1):A15, (2):C30), 60点

第二問の解答

概要 (第二問)

(1)はやっぱり有名な曲線の図示問題ですが,どちらかといえばマイナーな媒介変数表示なので,見たことはない人も多いと思います.

(2)は計算問題ですが,「ただの」かどうかは知りません.

方針 (第二問)

(1)は指示に従えば解けます.

問題は(2)ですが,(1)の結果から立式した後,置換積分することまでは自然に思いつくはずです.

問題はその後ですが,有理関数の積分の王道に従って部分分数分解するか,もう一回置換積分をして$\frac{1}{\cos^n x}$の積分に帰着させるかのどちらかでやるのが思いつきやすいでしょうか.

解答例は後者でやっていますが,私が計算を苦手にしていることもあってあまりすっきりとしていません.

講評 (第二問)

解答例の公開前に難易度を口にしたくなかったというだけで,自作なので当然「ただの計算問題」かどうかはさすがに分かっています.

かなり大変です.

(2)の途中まではやることが分かりきっていますが,その後の計算量はかなり多く,見通しが立ちにくい計算を進めることになります.

時間をかければ解けるタイプの問題ではあるので,最後の計算は他の問題を解いてから手を付けるので良いと思います.

計算量が多く,詳細を書いていたら解答用紙にとても収まりきらないので,総評でも書きましたが,ただ代入,約分,変数を整理するだけのような論理的には重要でない部分はカットして,論証の主要な部分を書くのが良いでしょう.

第三問 整数 (B25), 60点

第三問の解答

概要 (第三問)

便宜上整数に分類していますが,有理数の問題です.

方針 (第三問)

とりあえず有理点に文字を置いて式を連立しましょう.

すると連立方程式が解けるので,自然と示せます.

講評 (第三問)

有理数同士の加減乗除は有理数になる,と言うのがポイントです.

そう難しくはないと思いますが,方針を思いつくのに苦戦することはあるかもしれません.

ところで,この問題は連立一次方程式に帰着されるので, (大学範囲の) 線形代数の知見を活用することもでき,$a, b, c$を具体的に求めずに証明可能だったりします.

線形代数を既習の方はやってみると面白いかもしれません.

当ブログでも後日別解として紹介することも考えています.

ちなみに,代数の言葉で言えば,本問の鍵は「$\mathbb{Q}$は体である」ということになります.

作った当時はあまり意識していませんでしたが.

第四問 微積分 (C35), 60点

第四問の解答

概要 (第四問)

微積の問題二問目です.

(2)で考えている定積分は楕円を折り返したときの共通部分の面積ですね.

方針 (第四問)

(1): $C_2$は$C_1$を$2\alpha$だけ回転させた図形になることがポイントです.

全体的に「角」が多用されているので,極座標のように考えると見通しが立ちやすいでしょう.

(2): (1)の誘導があるのでそう難しくはないと思います.

積分区間に$\alpha$を持っていけば,簡単に$\alpha$で微分できます.

講評 (第四問)

図形的に捉えられないと,(1)の計算量がかなり増えそうです.

また,例のごとく解答スペースの問題があるので,そこまで詳細にやらなくても,図形的に考察できれば十分な気もします.

第五問 確率 (B25), 60点

第五問の解答

概要 (第五問)

誤植があって,規則の$A, B, C$はそれぞれ$O, A, B$の間違いです.

確率の問題です.

この${ X_n }$によってとある図形が作図できます.

方針 (第五問)

とりあえず実験してみて,動きを追えればよいと思います.

解答用紙の大きさもあるので,適宜図示しながらざっくりと説明できれば容認されるのではないでしょうか.

厳密に示すなら解答例のように領域に名前を付けて証明していくか,ベクトルで求めるのが有力だと思います.

講評 (第五問)

解答例はまじめに示すこともできるよ,というもので,あれを解答欄に書くのは無理があることには注意してください.

解答例は問題の要求に対して過剰であまり気に入らないのであとで別解も出すつもりです.

そこまで難しい問題ではないと思っているのですが,特に作問者と解答者で感じ方が違いそうな問題なので,実は難しいかもしれません.

点がどのように変化していくのかを上手く追えると,簡単に解答できると思うので,それができるかが鍵となりそうです.

ちなみに,この操作によってフラクタル図形である「シェルピンスキーのガスケット」を近似的に作図できます.

解答例はフラクタル図形ができる様子まで考えているので,本問に対して過剰な記述になっているわけです.

独り言

今回は結構過去作を使えていて,後半3問はリライトはしていますが何年も前に作った未公開問題です.

次回はどこの大学の入試も模さない,「無冠模試」の予定です.

京大理学部特色と東工大一般の中間くらいの難易度の問題群 (5問,240分くらい?) を予定しています.

多分9月上旬に公開しますが,第三週の週末になる可能性もあるので,決まり次第お伝えします.

追記:次の自作模試 (というより問題セット) は9/11に公開予定です.

関連記事

過去の自作模試の問題・解答です.

京大模試サンプル (没問題集)

令和3年度私擬京大入試

令和3年度後期私擬京大入試

令和3年度無冠模試

このブログの全記事の一覧を用意しました.年度別に整理してあります.

過去問解説記事一覧【年度別】

概要

未発表の過去作を集めて自作の模試を作るシリーズ第二弾です.

今回の模試『令和3年度後期私擬京大入試』も京大模試です.

6問構成で試験時間150分です.

問題ファイルは以下のリンクからダウンロードできます.

問題ファイル

7/23: 問題不備があったので補足しました.

問題ファイル (補足前)

以下では問題の概要や解答例に触れているので,問題を解こうとしている方は見ない方が良いと思います.

各大問の解答例は以下のリンクからどうぞ.

目次

模試の難易度評価

本模試の大問構成,分野,難易度,配点は以下のようになっています.

自作京大模試の難易度評価

  1. 積分 (AA15), 30点
  2. 図形の論証 (A15), 30点
  3. 整数 (A20), 35点
  4. 整数・確率 (B30), 35点
  5. 数列 (B25), 35点
  6. 図形の論証 (C30), 35点

自作問題なのでいつも以上に主観的な評価になっていることに注意してください.

近年ならやや易しめの難易度,というつもりですが,解き方次第で計算量や見通しやすさが大きく変わるので,人によって感じる難易度が大きく異なると思います.

数学が得意な人には簡単に,苦手な人には (本来以上に) 難しく感じるなら思惑通りなのですが……

模試全体の難易度・構成等

前半は意図的に易しくしています.

易しくしすぎた気もしますが,下手に難しい方にぶれても仕方がないのでこんなものかなと思っています.

前半はスピーディーに解いて,後半に時間を回せれば最後まで十分解ききれると思います.

後半は難しめ.

試験場なら前半完答,後半の一問以上完答あたりがボーダーになりそうです.

得意な人なら後半でも二問は安定して解答できると思います.

2020年の難易度評価

参考用に,2020年の京大入試の難易度評価を置いておきます.

  1. 複素数 (A20), 30点
  2. 整数 (A25), 30点
  3. 図形の論証 (B25), 35点
  4. 整数 (C30), 35点
  5. 場合の数 (B20), 35点
  6. 求積 (A25), 35点
難易度表記の説明 カッコ内の難易度表記はAA,A,B,C,Dの五段階による難易度評価と,演習する際の標準的な解答時間(五分刻み)です. 試験場では様々な要因により,ここに書いてあるよりも苦戦すると思います.

難易度評価は,それぞれ

  • AA:解けないと周りの受験生とかなり差がついてしまう問題
  • A:解ければとりあえず数学が足を引っ張ることはない,という難度の問題
  • B:解けると周囲に対してやや優位に立てるが,解けないとやや不利になる問題
  • C:数学が得意なら正答が狙える難度で,解けなくても困らないが,解けると大きく優位に立てる問題
  • D:難易度が高すぎて点数と釣り合わない,いわゆる「捨て」の問題

であることを大まかに表しています.

大体『大学への数学』より(受験生に)厳しい評価で,『京大の理系数学27ヵ年』よりは甘い評価かなと思います. 数学が苦手な人は最低限Aの問題を確実にBの問題をできるところまで,数学が得意な人はCの問題まで完答するのが目標かなと思います. 難易度Dの問題はどんなに数学が得意な人でも部分点狙いが現実的でしょう. 個人的にはこの難易度の出題は作問者の判断ミスだと思っています.

各大問の解答の方針と講評

大問ごとの講評です.

第一問 積分 (AA15), 30点

第一問の解答・解説記事一覧

概要 (第一問)

積分の問題です.

有名な性質なので知っている人も多いかもしれません.

方針 (第一問)

置換積分してから部分積分すると$I$が求まります.

講評 (第一問)

計算したことがある人は少ないと思うのですが,もしいたらすみません.

ただ,京大入試の第一問では $$ \int_0^\frac{\pi}{4} \frac{\mathrm{d}x}{cos x} $$ の計算をさせることもあった (2019年第一問問二(2)) ので,既知の問題が出題される可能性は十分あると思います.

簡単すぎる気もしますが第一問なのでこの程度でも大きな問題はないでしょう (参考:2015年第一問など).

でも,小問集合にした方が良かったかもしれません.

第二問 図形の論証 (A15), 30点

第二問の解答・解説記事一覧

概要 (第二問)

空間図形の問題です.

解くための道具は自分で選んでください.

方針 (第二問)

適当に頂点に名前を付けて,ベクトルで解くのが比較的楽だと思います.

座標でも解けますし,初等幾何で解くこともできます.

コメント (第二問)

この手の問題は京大入試ではよく出てきます.

京大入試ではまだこの構図は出題されていませんが,本問ももしかしたらやったことがある人がいるかもしれません.

例えば,塾のテキストや,予備校の模試の問題では同じ構図の問題が収録されている可能性も高そうです.

ところで,この問題の$T'$のような多面体のことを双対多面体といいます.

面を頂点に取り替えたものに相当します.

正四面体の双対多面体は正四面体ですが,立方体の双対多面体は正八面体,正八面体の双対多面体は立方体になります.

また,正十二面体の双対多面体は正二十面体で,正二十面体の双対多面体は正十二面体です.

つまり,二つ (または一つ) の多面体がペアになっています.

第三問 整数 (A20), 35点

第三問の解答・解説記事一覧

概要 (第三問)

かの有名なピタゴラス数の問題です.

中学生でも一応解けるはずです.

小学生だと「証明」という概念を持っているかどうかが一番の問題になります.

方針 (第三問)

「因数分解」,以上.

(1)は背理法で示すのがやりやすいと思います.

講評 (第三問)

(1)と(2)は一応並列の小問になっていて,簡単すぎる問題の「かさ増し」という側面もあります.

(1)と(2)の考え方はほとんど同じなので,どちらか一方が解ければもう一方も解けるはずです.

そういう意味では,両方とも誘導問題であるともいえるかもしれません.

いずれにせよ簡単な問題なので,もし試験場で出たら示せないと厳しいと思います.

雑談

有名すぎて問題としてはやったことはないと想像しているのですが,数学をちゃんと教える学校や塾に通っている人は解いたことがあるかもしれません.

と,思っていたのですが,私自身小学校時代に(2)を考えた記憶があることに気付きました.

考えたと言っても,当時は証明という概念をよく知らなかったので,それですべてだとは分かってなかった気がします笑

そういうわけで,実はかなりの人が一度は考えたことがあるのではないかとも思います.

だとすると,「入試」の問題としては不適切だということになりますね.

第四問 整数・確率 (B30), 35点

第四問の解答・解説記事一覧

概要 (第四問)

第四問は整数,しかも$n$進法と確率を組み合わせた自信作です.

あまり整数と確率の融合問題は見かけないですよね.

(1)は有名問題ですが,知らない人もいるかもしれないので小問で分割してあります.

今は一次不定方程式が明確に範囲内なので,「知らない」というのも変な話なのですが.

方針 (第四問)

(1)はユークリッドの互除法で示すか,合同式と鳩の巣原理 (部屋割り論法) を組み合わせて示すのがよくある示し方だと思います.

解答例では前者で示していますが,後者の方が(2)につながりやすい上,書きやすいと思います.

(2)は(1)を活用するのですが,そのままだと使えないので一意性も示す必要があります.

(1)を鳩の巣原理で示すと一意性も同時に示せるので,(2)の解答が楽になります.

講評 (第四問)

「p進法の九九表」と言えば伝わるでしょうか.

元ネタはそれで,(2)では表からランダムに一つの数を選んでいます.

前半は薄味な問題が多かったですが,これは後半を解く時間を設けたいという思惑によるものです.

後半は少し骨のある問題が続きます.

本問は小問で分割したこともあり,手間のかかり具合で言えば第六問以上に面倒かもしれません.

見通しは立ちやすいと思うので,総合的な難易度としては第五問,第六問の方が難しいと思います.

(1)は書きにくい論証ですが,教科書レベルなので全く書けないのはまずいです.

多少言葉足らずになってしまうのは仕方ないとも思いますが,大筋は抑えてください.

第五問 数列 (B25), 35点

第五問の解答・解説記事一覧

概要 (第五問)

数列の問題です.

京大入試だと90年代,00年代によく見かけたような,少し古い印象もします.

とはいえ,この年代の問題が再利用されることもありましたし (2020年第一問),京大入試の傾向は数十年間にわたって安定しているので,今年出題されても違和感はないと思います.

方針 (第五問)

条件が一つしかないので色々試すしかありません.

しばらく実験してみると,漸化式が得られると思うので,そこからどうにか示していきます.

$\log$をとると見通しが立ちやすいと思いますが,とらなくても解答できます.

講評 (第五問)

それなりに難しいとは思いますが,実験癖さえあれば十分解答可能なはずです.

$a_n$が具体的に表せないので存在だけ証明していますが,逆関数の合成として表すことはできます.

第六問 図形の論証 (B30), 35点

第六問の解答・解説記事一覧

補足後

補足前

概要 (第六問)

図形の論証問題です.

「垂線の足」という表現は最近,教科書会社で自主?規制されているようなので,数研出版で採用されていた「垂線の交点」という表現を使いました.

普通に「垂線の足」と書きたいですし,解答では今後も使用予定ですが,さすがに教科書にない用語を模試の問題文で使うわけにはいかないですね.

方針 (第六問)

初等幾何,座標どちらでも解答可能です.

共円問題ということもあって,初等幾何なら反転,座標なら複素数平面を使うのが有効ですが,どちらも使わなくても証明できます.

初等幾何で示す場合は凸四角形の場合と凹四角形の場合があることに注意する必要があります.

座標で示す場合は場合分けが要らないので,初等幾何でも示せるにもかかわらず,かなり有力です.

ただし,対角線が座標軸になるようにしないと,計算量が大変なことになります.

座標で示す場合は最初の設定が肝心です.

座標で表した後は円周角でも方べきの定理でも好きなように示せばいいと思いますが,複素数を使うと対角の和が$\pi$となることが簡単な計算で示せます.

講評 (第六問)

それなりに有名な定理のはずです.

例えば,このpdfファイルでは凸四角形の場合ですが,Theorem 3として紹介されています.

http://forumgeom.fau.edu/FG2012volume12/FG201202.pdf

初等幾何で示す場合はこのpdfの証明が参考になると思います.

なお,問題不備があったので途中で補足しています.失礼しました.

当初反転で考えていたので,普通直線と円が区別されるということを忘れていました.

※反転では直線も円と考えるほうがうまくまとまる

ちなみに,凸四角形だと直線にならず,凹四角形の場合だけ直線になることがあります.

一応複素数の問題のつもりですが,別に複素数で示す必要はありません.

独り言

元々は過去作中心でストックを消費する予定だったのですが,完成したときには第六問以外新作になった上,ストックも逆に増えてしまいました.

第六問は問題不備があって補足したので,結局ストックそのままの問題は一問も採用されなかったことになりますね笑

次回は8/22公開予定の東工大模試ですが,早ければ9月初旬にももう一つ公開できそうです.

おそらくどこの大学の入試も模さない,「無冠模試」になると思います.

理学部特色と東工大一般の中間くらいの難易度の問題群を予定しています.

関連記事

過去の自作模試の問題・解答です.

模試サンプル (没問題集)

令和3年度私擬京大入試

このブログの全記事の一覧を用意しました.年度別に整理してあります.

過去問解説記事一覧【年度別】

※この記事は当ブログ管理人一個人による私的な見解です.

概要

この記事は2013年京大入試の,理系数学の問題についての講評です. 解答は別の記事に掲載してあります.

各大問の解説記事は以下のリンクからどうぞ.

目次

試験全体の講評

2013年京大理系数学の大問構成,分野,このブログでの難易度評価は以下のようになっています.

2013年の難易度評価

  1. 図形の論証(AA20),30点
  2. 数列(B15),35点
  3. 整数・整式(B25),35点
  4. 微分(AA10),35点
  5. 求積(A20),30点
  6. 確率漸化式(A20),35点
難易度表記の説明 カッコ内の難易度表記はAA,A,B,C,Dの五段階による難易度評価と,演習する際の標準的な解答時間(五分刻み)です. 試験場では様々な要因により,ここに書いてあるよりも苦戦すると思います.

難易度評価は,それぞれ

  • AA:解けないと周りの受験生とかなり差がついてしまう問題
  • A:解ければとりあえず数学が足を引っ張ることはない,という難度の問題
  • B:解けると周囲に対してやや優位に立てるが,解けないとやや不利になる問題
  • C:数学が得意なら正答が狙える難度で,解けなくても困らないが,解けると大きく優位に立てる問題
  • D:難易度が高すぎて点数と釣り合わない,いわゆる「捨て」の問題

であることを大まかに表しています.

大体『大学への数学』より(受験生に)厳しい評価で,『京大の理系数学27ヵ年』よりは甘い評価かなと思います. 数学が苦手な人は最低限Aの問題を確実にBの問題をできるところまで,数学が得意な人はCの問題まで完答するのが目標かなと思います. 難易度Dの問題はどんなに数学が得意な人でも部分点狙いが現実的でしょう. 個人的にはこの難易度の出題は作問者の判断ミスだと思っています.


試験全体としての難易度・特徴

前年の2012年と比べて,全体的に大きく易化した年でした. また,2014年以降ではこれと同等な難易度の年はありません. 京大入試は2000年代後半から2010年代前半にかけて難易度が乱高下していたのですが,2003年は易しい方に入ります. 今の京大受験生には信じられない難易度でしょうね. 特に第四問はどうしてしまったのかというくらい易しく,定期試験レベルです. 第三問はこの年の問題では一番難しく,2002年の東大の問題から誘導が省略されただけの,全く同じ問題です. 誘導が無い分少しだけ難しくなっていますが,これも近年の京大入試なら標準的な難易度です.

大問の構成については,特に計算量の多い問題も,発想力の必要な問題もありませんが,工夫次第で計算量が変化したり,正確に論述するのは案外難しかったりと,問題一つ一つは極めて京大らしい特徴を持っています.

合格ラインに乗るには?

京大の二次試験は例年概ね$6, 7$割が合格ラインです. 医学部でも,$7$割を切ると厳しいですが,ちょうど$7$割なら最低合格点が高めの年でもギリギリ受かります.

ただし,2013年の理系数学は易しかったので,$7, 8$割が目標です. 最低合格点が例年よりかなり高くなってしまっており,特に医学部は二次が$7$割だとセンターで約$98$%の得点が必要になってしまいます. センター$98$%は可能ですが狙うものではないので,医学部受験生なら演習では$8$割以上を目指したいです. 数学の比率が高い理学部を志望する人も同様.

大問$1,2,4,5,6$のうち$4$問を最後まで解き切り,残りの二問をできるところまでやれれば$7$割程度には達するでしょう. $8$割を取るなら解答者の主観で$5$問完答程度が目安です. すると減点されて$8$割くらいになります.

数学が得意な人は当然,全問完答を狙いましょう. 時間も余ると思うので,議論の不備もかなりの部分が見つかると思います.

総評

基本的には京大らしい良問が集まったセットなのですが,少し簡単すぎる気もします. これではあまり差がつかないでしょう.

もう少し議論の仕方に悩むような問題があれば,解き終わった後の余った時間が議論の完成度を高めることに費やされ,論述力を見る試験としてより良かったのではと思います.

過去問演習の際にはこのセットで自信をつけられれば良いですね.

各大問の解答の方針と講評

第一問 図形の論証(AA20),30点

第一問の解説記事一覧

概要と方針 (第一問)

線分の長さの比を求める問題で,図があれば中学受験や高校受験の問題のようです. 当時のように相似に着目して考えるか,それとも現代風にベクトルで考えるか. どちらで考えても解答可能ですが相似に着目するとより速く解けます. 斜交座標で解くという手もあります.

講評 (第一問)

かなり簡単な問題です. ただし,どう解くかで個性が出ます. 初等幾何で解く方が速いですが, 補助線を見つけるまでにかかる時間が読めないのでベクトルも有力です.

ベクトルで解くと連立方程式の計算問題,初等幾何で解くと発想一発という点でなかなか面白い問題です. 図があればみんな初等幾何で解いたのでしょうが,図がないからか,大抵の模範解答はベクトルが本解で相似は無いか別解. 問題文を図に起こす習慣がない受験生の方が多いという判断なのでしょうか.

どのように解くかは自由ですが解かないという選択肢はありません. 簡単な分,この大問で失点するのはかなり痛いです.

第二問 数列(B15),35点

第二問の解説記事一覧

概要と方針 (第二問)

とある数列の総和を評価する問題です. なじみのない数列で,解法はすぐには思い浮かばないでしょう.

思い浮かばなかったらまずは実験です. $a_n$の項を具体的に計算してみるとすぐにタネが分かります.

講評 (第二問)

任意の自然数とあるから帰納法,と安易に飛びつかなければ簡単に示せる問題です. 問題パターンの暗記なんてしてくれるなという京大からのメッセージでしょうね.

結局帰納法は使いますが$M$でもなければ$N$でもなく,高々有限個しかない$n$についての帰納法です. しかも普通に解けば帰納法であることはあまり意識せずに示すことになると思います.

なお,$N$に関する帰納法であれば解答可能ですが$n$に関する帰納法より回り道です. $M$に関して帰納法を考える意味は全くありません.

簡単な問題なので完答したいです. ただ,自分で手を動かす習慣がついていない受験生って案外多いので,得点率はあまり高くなかったかもしれません.

第三問 整数・整式(B25),35点

第三問の解説記事一覧

概要と方針 (第三問)

多項式の余りの係数に関する論証です.

$x^n$を実際に割り算するのは大変です. そこで,$x^{n-1}$のときの$a,b$を使って漸化式を使うのが一つの案. この案では数学的帰納法が威力を発揮するでしょう.

あるいは,$x^2 - 2x -1 = (x -1 -\sqrt{2})(x - 1 + \sqrt{2})$と表せることを利用して,$a,b$に関する連立方程式を立てるという案もあります.

講評 (第三問)

2002年の東大でほとんど同じ問題がありましたが,東大の方にはあった誘導が無くなっています. 当時の受験生であれば2002年の東大の問題を解いていた可能性もかなりありますが,一度しか解いたことのない問題,それも誘導が無い分少しだけ難しくなっている問題を本番で解けるのであれば,十分数学の力はあると言えるでしょう.

上で示した方針のうち,前者が東大の過去問で誘導されていました. 一方,後者は誘導が無くなったことで考えられるようになった解き方です. 基本的には前者の方がやや簡単でしょうか. 後者は数学的帰納法というレールが無い分,より多くの発想が必要ではありますが,解答時間は少し削減できそうです.

誘導がないおかげで様々な解き方が考えられるので,数学的な思考能力を見るという点ではより好ましい問題になっていると思います. 一方で,誘導を外した分,原理的には解くまでの時間は減るのですが,一般的には思考力が必要になる分難しくなります. 京大入試の問題の難しさと,東大入試の高得点を取ることの難しさの違いはこのようにして生まれます.

この年一番の難問なので,合格ラインにのるためには必ずしも正答する必要はありませんでした. ただ,近年の京大入試であればこの問題の難易度は標準か,少し難しい程度です. 演習で解けなかった場合もしっかり復習しましょう.

第四問 微分(AA10),35点

第四問の解説記事一覧

概要と方針 (第四問)

定期試験の問題のようですがこれは二次試験の問題です. 微分してグラフを描けばいいと思います.

講評 (第四問)

基本問題なのであまり語ることはないです. 上に凸な関数と下に凸な関数の足し算になっていることが一応のポイントです. 二つの関数のグラフが似ていることに着目して評価することも可能ですが,普通に解いて簡単なのでさすがに実用性がないです.

とても簡単な問題ではあるのですが,凸性をどう活用するかなど,各所で時間に差が出てきます. 六問全体でみるとこのような問題も学力差が結構出るんですよね. 不等式の方向から最大値も分かってしまうので,いかに高速に正確な議論ができるかが鍵になりそうです.

もちろん答えや議論が合っていることは大前提です.

第五問 求積(A20),30点

第五問の解説記事一覧

概要と方針 (第五問)

パズルのような求積の問題ですが,この年のパズルは簡単です. $C_1, C_2$も$A, B$も$y$軸について対称なので片方だけ考えれば十分です.

$P$が$AB$の上にあるか下にあるかの二通りが考えられるはずですが,実現するのは一つだけです.

講評 (第五問)

正三角形になるという条件から曲線の位置が一つに決まるということが最大のポイントで,ここをどれだけ正確に議論できるか.

曲線さえ決まってしまえば簡単な計算問題になるので,大きな失点は絶対に避けたいです.

第六問 確率漸化式(A20),35点

第六問の解説記事一覧

概要と方針 (第六問)

($1$)は($2$)の誘導です. ($2$)は漸化式でも解けますが,漸化式を立てるまでもないでしょう.

講評 (第六問)

京大入試では毎年のように確率と数列の融合問題が出題されますが本問もその一つです. そしてそれらの問題は漸化式を立てることで解ける問題がほとんどですが本問もその例にもれません.

ただし,多くの問題は漸化式を立てずとも求めることができ,本問も漸化式を立てずに解くことが可能です. 漸化式を立てない方がより簡潔に解答できるでしょう.

なかなか珍しい移動の仕方ですが,($1$)の強力な誘導のおかげで$2$回セットで考えることに気づきやすくなっており,十分完答できるでしょう.

簡単な問題ですが,六問中三番目に難しい問題なので完答は必須ではありません. このの問題か第二問のどちらかを最後まで解ききれれば一応合格ラインに乗れると思います.

各大問の解説記事

このブログの全記事の一覧を用意しました.年度別に整理してあります.

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