概要

※この記事は当ブログ管理人一個人の私的な見解です.

※数学のみの講評です.いわゆる解答速報ではない上,他の科目はやりません.

この記事は2021年東工大一般入試の,数学の問題についての雑感です. いわゆる講評で解答速報ではありません.

また,略解は一部載せていますが,例年と違って他者の確認を経ていないので,自分で検証できる人だけ参考にしてください.

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去年の東工大入試の講評

目次

設問の難易度等

まずは設問別の難易度評価から.

ただ,他年度との比較はまだ行っていませんので,とりあえず「単年度」でのおおまかな難易度評価だけざっと述べておきます.

そういう訳で,これまでの難易度評価との互換性はありません.

以下では,他の設問と比べて易しい問題は「易」,難しい問題は「難」,残りを「標」としています.

設問の分野・配点,設問の難易度の目安

  1. 場合の数・数列, 60点
  2. 平面図形, 60点
  3. 整数, 60点
  4. ベクトル, 60点
  5. 軌跡・領域・微積分, 60点

※いつもより主観的なので注意.

試験全体の難易度

どの大問も(1)はかなり簡単で,時間もほとんどかからないと思います.

一方,第二問,第三問の(3)が比較的難しめです.

第一問(2)や,第三問(2),第四問(3)も気づけば簡単ですが「ハマる」ときがありそうな問題です.

どれもそこまで難しい問題ではありませんが,全てを真面目に解こうとするとかなり忙しくなります.

なお,「易」のなかでは第五問(2)が難しめです.逆に「標」の第四問(2)は易しめです.

残りの問題はそれこそ「標準的」と言えそうな問題ばかりで,多少の実験,観察,計算によって正解しうる問題です.

試験全体の構成

全体的に「東工大入試としては」難しい問題が見られない一方で,小問数がかなり多いという印象を覚えました.

今年はコロナの影響で学力低下の懸念があったので,その備えだったかもしれないと予想していますが,見当はずれかもしれません.

標語的には「2020年の試験から,難易度をそのまま問題数だけ増やした試験」といった感じでしょうか.

東工大として比較的低難度な問題をたくさんという構成なので,要は他の一般的な大学の入試のようになったということです.

長試験時間,少大問数なのは変わらないので,名大入試的な構成と言った方がいいかもしれませんね.

一方,分野は例年とあまり変わらない印象です.

ただし,複素数の出題はありませんでした.第二問(3)を複素数で解くことは一応可能ですが,あくまで「不可能ではない」という程度の話で,出題されなかったとみるのが素直だと思います.

総評

問題数が多い忙しい試験,なようで意外とそうでもありません.

確かに,全ての小問を解こうとすると (つまり,満点を狙おうとすると) 時間的にかなりタイトです.

ただ,難しい問題を無理に解こうとしなければ,易しい問題が多かったのもあって逆にゆとりを持って解答できたはずです.

ゆとりがあるということは,残った時間で何問か解きうるということなので,満点を取りたい人以外は難易度,時間,分野のどれも例年と大きく変わらない試験だったと予想しています.

まあ,さすがに去年よりは難しいと思いますが,例外は去年の方です.

各大問の解答の方針と講評

大問ごとの概要です. 略解は参考程度に.

第一問 場合の数・数列, 60点

第一問の解答

概要 (第一問)

総和に関する不等式の問題です.

(1)はただの誘導で,(2)が主眼になっています.

方針・略解 (第一問)

(1)は各桁に$9$を含まない$k$桁の正の整数の場合の数なので, $a_k = 8 \cdot 9^{k -1}.$

(2)は(1)を参考に各桁の整数ごとに別々に和をとって不等式で評価することを考えます. すると, $$ \sum_{n = 1}^{10^k - 1} b_n = \sum_{k = 1}^{10} b_n + \cdots + \sum_{k = 10^{k - 1}}^{10^k - 1}b_n \leqq 8 + \cdots + \frac{8 \cdot 9^{k - 1}}{10^{k - 1}} < 80 $$ のようにして証明できます.

講評 (第一問)

$\displaystyle \sum_{k = 1}^\infty \frac{1}{k}$は発散してしまうのに,この級数は収束する,という面白い問題です.

定義からして真面目に計算できそうに見えないので不等式を使うわけですが,その使い方がポイントです.

誘導は要るのだろうかと解いているときは思いましたが,無ければそれなりに難しくなるのでいいバランスなのかもしれません.

(2)は程よい難易度で,多少の試行錯誤から方針を立てられると思います.

第二問 平面図形, 60点

第二問の解答

概要 (第二問)

楕円上の四角形を考察する問題です.

(1)は誘導,(2)も一応(3)の誘導になっていますが,そこまで強いつながりではありません.

方針・略解 (第二問)

(1)

楕円の式に$y = ax + b$を代入した $$ \frac{x^2}{4} + (ax + b)^2 = 1 $$ が相異なる2実解を持つことが必要十分条件になります. $$ 4a^2 - b^2 + 1 > 0. $$

(2)

(1)で$P, Q$の$x$座標 (または$y$座標) をほぼ求めているのでそれを使うのが簡単です.

$l, m$の傾きが$a$であることから,$P, Q$の$x$座標の差と,$S, R$の$x$座標の差が等しいことが条件と言えて, 結局 $$ c = -b $$ が条件となります.

(3)

方針①

(2)で各点の$x$座標を求めているので,そのまま$P,Q,R,S$の成分表示で考えていきます. $$ \begin{aligned} \overrightarrow{PQ} \cdot \overrightarrow{PS} &= 0 \\ \left| \overrightarrow{PQ} \right| &= \left| \overrightarrow{PS} \right| \end{aligned} $$ となることが$PQRS$が正方形となる条件なのでこれを実際に計算します.

少し汚いですが計算を進めると,最終的に各辺が座標軸と平行な,$\left(\pm \frac{2}{\sqrt{5}}, \pm \frac{2}{\sqrt{5}}\right)$を頂点とする正方形だけが答えと分かります.

方針②

(2)から$l, m$が原点について点対称となっていることが分かるのでこれを活用します. 楕円$E$も原点について点対称なので,$P$と$R$,$Q$と$S$は点対称な点で,対角線は原点で交わります.

正方形とは長さが等しい対角線が中点で直交する四角形のことなので,楕円上の正方形の$4$頂点は$1$点の極座標表示$r, \theta$だけで表せることが分かり,$4$点全てが楕円上に乗るという条件から方針①と同様の正方形が得られます.

講評 (第二問)

(1), (2)は比較的易しめです.

(3)は他の大問の設問と比較しても難しめです. 基本的には,他の問題を解いてから最後に臨む問題になると思います.

ただし,例えば方針②のような計算量の少ないやり方を思いついて,意外とすんなり解けたということはありうると思います.

第三問 整数, 60点

第三問の解答

概要 (第三問)

二項係数に関する整数の問題です.

(1), (2)ともに誘導です.

方針・略解 (第三問)

(1)

二項係数の定義にしたがって実際に計算.

(2)

漸化式 $$ a_{n + 1} = \frac{2(2n + 1)}{n + 2}a_n $$ が得られれば,数学的帰納法で証明可能.

(3)

$n = 2, 3$が答え. これは簡単に実験で予想できるので,この証明を目指します.

方針①

$n \geqq 5$で$a_n$が合成数であることを証明します. $n = 1, 2, 3, 4$は具体的に計算.

(2)の結果と上の漸化式を使うと $$ a_n > 2n + 1 $$ と示せます. 一方で,$a_n$を素因数分解すると$2n$未満の素数しか含まないことが分かるので,合成数であると示せます.

講評 (第三問)

~~が素数となる○○をすべて求めよ,という形式の問題を本当によく見かけるようになったな,というのが最初に見たときの感想でした. どうでもいいですね.

さて,この問題はよくある$3$なり$5$の倍数であることを示してささっと解けてしまう問題とは少し違って,合成数であることだけが示せます.なにか具体的な素数$p$の倍数というわけではありません.

偶数なように見えるかもしれませんが$a_7$は奇数です.

本問の(3)と,第二問の(3)が最も難しい設問ということになるだろうと思います.

二項係数ということで既に整数の積 (と商) の形になっているのでそれを使う訳ですが,略解の方針にしろ他の方針にしろ あまり見かけない論法だと思うのでなかなか思いつきにくいと思います.

なお,(1)と(2)はそう難しくないので,(2)まで解くのが目標といったところでしょうか.

(3)は予想だけして,証明は余裕があればといったところ.

第四問 ベクトル, 60点

第四問の解答

概要 (第四問)

ベクトルの問題です. $\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}$があたかも一つのベクトルのようになっているというのがポイント.

(1)は(2)の誘導で,(3)は(2)の続き,あるいは具体例です.

どちらかといえば(2)がメイン.

方針・略解 (第四問)

(1)

実際に計算して, $$ k = -2. $$

(2)

$\vec{a} + \vec{b} + \vec{c}$をまとめて一つのベクトルとみてみると, 半径$3$の球内を動くベクトルと球面を動くベクトルとしてとらえられます.

後は図形的に見ても数式だけで処理してもあまり変わらず, $$ M = \frac{9}{2}. $$

(3)

$D$の位置と(2)の結果から$\vec{a} + \vec{b} + \vec{c}$(重心とみてもよい) が決まりますが, $C$の位置から$|\vec{a} + \vec{b}| = 2$と分かります.

つまり,ただ$1$点に決まってしまって, $$ \vec{a} = \vec{b} = \begin{pmatrix} \frac{7}{8} \\ -\frac{\sqrt{15}}{8} \\ 0 \end{pmatrix}. $$

講評 (第四問)

要は(1)は(2)の誘導になっているわけですが,ここに誘導がつくのは少し驚きました.

この誘導により,(2)がかなり見通しやすくなっています.

個人的には(2)も「易」とするか迷いましたが平均点は低そうな予感がしたので「標」ということにしておきました.

(3)は$1$点に決まってしまうので実はそこまで難しくはないのですが,(3)はかなり特別な状況で基本的には円になるので,先に円が見える逆に見えにくくなるかもしれません.

何かのはずみで$|\vec{a} + \vec{b}|$を計算してしまえば一瞬で氷解します.

第五問 軌跡・領域・微積分, 60点

第五問の解答

概要 (第五問)

恒例の積分の問題です.

計算量はありますが,ほとんど一本道です.

方針・略解 (第五問)

(1)

円周の下半分$y = a - \sqrt{a^2 - x^2}$が常に$x^2$より上にあることが条件で,計算すると, $$ a \leqq \frac{1}{2}. $$

(2)

同様に$x^2 - x^4$より上にあることが条件で,計算すると結局同じ $$ a \leqq \frac{1}{2} $$ が答え.

計算するときは,$X = x^2$と置換すると見やすくなります.

(3)

まずは円$C$を無視して4次関数の上側の回転体の体積を求め,そのあと$C$の回転体の分だけ「くりぬき」ます.

4次関数の上側下側合わせた回転体 ($0 \leqq y \leqq \frac{1}{4}$),つまり円筒の体積は $$ V_1 = \frac{\pi}{8} $$ と表せ,4次関数の下側の回転体の体積は $$ V_2 = \frac{\pi}{12} $$ と表せます.この結果から,4次関数の上側の回転体の体積は $$ V_1 - V_2 = \frac{\pi}{24} $$ と求まります.

一方,円$C$の回転体 (球) の$y \leqq \frac{1}{4}$の部分の体積は$a = \frac{1}{8}$を境に場合分けして, $a \leqq \frac{1}{8}$のとき $$ V_3 = \frac{4}{3}\pi a^3, $$ $a \geqq \frac{1}{8}$のとき $$ V_3 = \frac{a}{16}\pi - \frac{\pi}{192} $$ となります.

これらを合わせ,求める体積は $a \leqq \frac{1}{8}$のとき $$ V = V_1 - V_2 -V_3 = \frac{\pi}{24} - \frac{4}{3}\pi a^3, $$ $a \geqq \frac{1}{8}$のとき $$ V = V_1 - V_2 -V_3 = \frac{3}{64}\pi - \frac{a}{16}\pi $$ と計算できます.

講評 (第五問)

(1)は(2)の誘導なのだと思いますが,ほぼボーナス問題. 境界は曲率円になっていますが本問では特に意味はありません.

(2)も解き方は(1)とほとんど変わらず,ただ少し計算量が増えているのみです.

計算量は多少ありますが,そもそも$x \ll 1$なら$x^2 - x^4$と$x^2$はほぼ同じグラフですからほとんど結果は見えています.

なお,このことを利用して$a = \frac{1}{2}$の付近だけを検討するという論法も考えられます.

$a = \frac{1}{2}$で含まれるなら$a \leqq \frac{1}{2}$でも含まれることはすぐに示せるので,$a > \frac{1}{2}$では含まれず,$a = \frac{1}{2}$で含まれることを示せばほとんど終了です.

(3)は(2)までが分からなくても計算可能で,関連はあっても解く際には独立した問題です.

$V_3$は$y$軸,$V_2$は$x$軸で計算すると比較的計算しやすいと思います.

この大問はやることが分かりやすく一直線なので,時間をかければ確実に得点できます.

計算速度次第ですが優先したい問題の一つではあるでしょう.

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