自作の京大模試です. 6問構成で試験時間150分です. 問題ファイルは以下のリンクからダウンロードできます.
以下では問題の解説をしますので,問題を解こうとしている方は注意してください.
解答例は以下のリンクから閲覧可能です.
概要
未発表の過去作を集めて自作の模試を作るシリーズ第一弾です. 今回の模試『私擬京大入学試験』は京大模試です.
本模試の大問構成,分野,このブログでの難易度評価は以下のようになっています.
自作京大模試の難易度評価
- 整式(AA15),30点
- 図形の論証(A20),30点
- 数列(B20),35点
- 確率(B20),35点
- 弧長(C35),35点
- 整数(B25),35点
自作問題なので,いつも以上に難易度評価に製作者の主観が混じる可能性があることには注意です.
難易度はここ数年で易しめの年の京大入試程度だと思います.
2017年京大理系数学のような,題意や結論はつかみやすいけど,議論を正確に進めるのが難しい,という試験を目指して作っています.
六問中五問が証明問題というかなり偏った出題ですが,京大入試は割とこのような年もあります.
さすがに五問証明問題の年は前期試験だと$1991$年,後期試験だと$2000$年までさかのぼらないとありませんが,半分以上証明問題の年ならかなりあります.
また,六問ともあまり典型とは言えない問題なので,図を描いたり特別な値を試してみたりと,実験をしてみることが大切といえそうです.
難易度の比較用として,2020年京大前期の各大問の分野と,このブログでの難易度評価を記載しておきます.
2020年の難易度評価
- 複素数(A20),30点
- 整数(A25),30点
- 図形の論証(B25),35点
- 整数(C30),35点
- 場合の数(B20),35点
- 求積(A25),35点
難易度表記の説明
カッコ内の難易度表記はAA,A,B,C,Dの五段階による難易度評価と,演習する際の標準的な解答時間(五分刻み)です. 試験場では様々な要因により,ここに書いてあるよりも苦戦すると思います.難易度評価は,それぞれ
- AA:解けないと周りの受験生とかなり差がついてしまう問題
- A:解ければとりあえず数学が足を引っ張ることはない,という難度の問題
- B:解けると周囲に対してやや優位に立てるが,解けないとやや不利になる問題
- C:数学が得意なら正答が狙える難度で,解けなくても困らないが,解けると大きく優位に立てる問題
- D:難易度が高すぎて点数と釣り合わない,いわゆる「捨て」の問題
であることを大まかに表しています.
大体『大学への数学』より(受験生に)厳しい評価で,『京大の理系数学27ヵ年』よりは甘い評価かなと思います. 数学が苦手な人は最低限Aの問題を確実にBの問題をできるところまで,数学が得意な人はCの問題まで完答するのが目標かなと思います. 難易度Dの問題はどんなに数学が得意な人でも部分点狙いが現実的でしょう. 個人的にはこの難易度の出題は作問者の判断ミスだと思っています.
各大問の解答の方針と講評
第一問 整式(AA15),30点 解答例(pdf版)
問題の概要と方針
まずは実験してみましょう. $f'(x)$が$f(x)$で表せるので,$n$階導関数は$P_{n - 1}(x)$と$f(x)$で表せます.
コメント
シグモイド関数を題材とした論証の基本問題です.
実験すれば数学的帰納法で示すことを思いつくでしょう.
第一問ということで簡単な問題ですが,解法がすぐに思いつかないような問題を前にしたとき試行錯誤できるか,ということと,正確に論証を進められるかということを見るという狙いもあります.
まあ,入試演習に慣れている人には初見で数学的帰納法を思いつかれそうですが.
第二問 図形の論証(A20),30点 解答例(pdf版)
問題の概要と方針
まずは$n = 1,2$のような小さな値で実験してみると良いでしょう. 何らかの法則が見えると思います.
コメント
$P_k$は$n$によって違う点を意味するので$P_{n,k}$とすべきでしたね…… まあ分かるだろうということで訂正はしません.
取りつくし法を題材とした問題です. 今で言う$\frac{1}{6}$公式を,アルキメデスが発見した際に用いた方法で確認してみようという趣旨です.
この問題では囲まれた面積が$\frac{(\beta - \alpha)^3}{6}$以上であることを示しています.
接線で囲まれた領域も計算すれば,はさみうちの原理により$\frac{(\beta - \alpha)^3}{6}$に収束することが示せます.
第三問 数列(B20),35点 解答例(pdf版)
問題の概要と方針
複素数の積の形に見えた人はその直感を信じて試してみましょう. 見えなかった人もやっぱり解法がすぐには思いつかないはずなので色々試すしかありません.
結局のところ実験してみないとよくわからないという問題でしょう.
コメント
数列の問題ですが,連立漸化式というより点列の問題です.
複素数列とみなすと等比数列になるようになっています.
もちろんそこに気づかなくても解けますが,気づくとかなり見通しが良くなるでしょう.
2000年代の京大入試風味ですが,2020年京大入試では2003年京大後期の複素数の問題がほぼそのまま出題されたので,この頃の問題がさらに再び出題されてもおかしくはありません.
それくらい複素数で出題しようとすると問題のパターンが限られます. 高校範囲の複素数ってやれることがかなり限られていますからね.
実は元々入れようとしていた問題を急遽没にした結果,新たに作った問題だったりします.
第四問 確率(B20),35点 解答例(pdf版)
問題の概要と方針
この問題も実験をしてみると分かりやすいです. $n$回以内に勝利できる確率が任意の$n$で$\frac{5}{7}$未満であることを示しましょう.
コメント
硬貨ではなくじゃんけんであれば小学生くらいの頃に似たようなことをやっていた人も多いのでは?
少し変わった問題ですが,実験してみたり,実際に確率を求めてみようとしてみれば方針は立てられると思います.
書き方に困ることはあるでしょうが,後半の問題の中では解きやすい部類に入ると思います.
第五問 弧長(C35),35点 解答例(pdf版)
問題の概要と方針
(1) 基本問題です. このような関数はいくらでもあるので$1$つ求めよ,となっています. 適当にパラメータ表示してやればよいでしょう.
(2) (1)は(2)の誘導に一応なっていますが,乗る必要は必ずしもありません. どちらかというと(1)と(2)は並列的で,合わせて(3)を考えるような構成になっています.
正直(1)よりも簡単です.
(3) (1)と(2)の両方を合わせて解きます. $a = 1$で最小になることはすぐに予想がつくので,不等式で評価することを考えます. (1)の積分表示で(2)を考えてみれば上手く不等式を作れるでしょう.
コメント
(1),(2)は(3)の誘導に過ぎず,入試問題としては差が出ない問題です. 配点は$5$点,$5$点,$25$点くらいが適正だと思います.
(1)と(2)を一つの小問にしても良かったかもしれません.
なお,この問題は,「面積が等しい図形の中で周が最小なのはどのような図形か」という問題の特別な場合です.
第六問 整数(B25),35点 解答例(pdf版)
問題の概要と方針
角を考えるのに必要なのは辺$AB,AC$であって,三点の座標ではありません. ベクトル的に考えられれば見通しが立ちやすくなるでしょう.
コメント
無理数であることを示せ,という問題は背理法で示すことが多いですが, 有理数であることを示すときは具体的な表式を考えたくなります.
この問題の場合は加法定理によって表式が得られます. ただし,$\tan \theta$は定義できない点が存在するのでそこに注意する必要があります.
各大問の解説記事
このブログの全記事の一覧を用意しました.年度別に整理してあります.