※数学のみの講評です.
この記事は2014年京大入試の,理系数学の問題についての講評です. 解答は別の記事に掲載してあります.
各大問の解説記事は以下のリンクからどうぞ.
概要
2014年京大理系数学の大問構成,分野,このブログでの難易度評価は以下のようになっています.
2014年の難易度評価
- ベクトル(AA15),30点
- 確率漸化式(A15),30点
- 図形量の最大最小(A20),35点
- 軌跡・領域(A25),35点
- 整数(B30),35点
- 求積(B25),35点
なお,カッコ内の難易度表記はAA,A,B,C,Dの五段階による難易度評価と,演習する際の標準的な解答時間(五分刻み)です. 試験場では様々な要因により,ここに書いてあるよりも苦戦すると思います.
難易度の目安ですが,それぞれ
- AA:解けないと周りの受験生とかなり差がついてしまう問題
- A:解ければとりあえず数学が足を引っ張ることはない,という難度の問題
- B:解けると周囲に対してやや優位に立てるが,解けないとやや不利になる問題
- C:数学が得意なら正答が狙える難度で,解けなくても困らないが,解けると大きく優位に立てる問題
- D:難易度が高すぎて点数と釣り合わない,いわゆる「捨て」の問題
というつもりで書いています. 大体『大学への数学』より(受験生に)厳しい評価で,『京大の理系数学25ヵ年』よりは甘い評価かなと思います. 数学が苦手な人は最低限Aの問題を確実にBの問題をできるところまで,数学が得意な人はCの問題まで完答するのが目標かなと思います. 難易度Dの問題はどんなに数学が得意な人でも部分点狙いが現実的でしょう. 個人的にはこの難易度の出題は作問者の判断ミスだと思っています.
さて,問題の難易度ですが,2014年まで約10年間,京大入試の数学では難易度が乱高下していましたが,この年以降は難易度が高止まりします. なお,全体的に前年の2013年より難しくなっていますが,2012年よりは簡単ですし,2015年以降この年より簡単なセットは出題されていません. 2019年の今から見れば,むしろ易しめのセットに見えるでしょう.
大問の構成は京大の例年通りのスタイルで特に変わったところはありません. 全体的に計算量はあまり多くなく,論証の正確さに気をつける必要があるなど,とても「京大らしい」性質の問題が多いです. また,[5]ではある程度の発想が必要ですが,正解に至ることのできる発想は何通りもあります. なお,[1]~[4]は京大入試としては簡単な問題ですから,落とさないようにしたいところ.
各大問の解答の方針と講評
第一問 ベクトル(AA15),30点 解答例
問題の概要と方針
直線上の点から別の直線に下ろした垂線の長さによって,三本の直線がある意味で「一番近づく」ときを考えさせる問題です. 問題文にベクトルが使われているので,素直にベクトルで計算してみます.
講評
ベクトルで考えると直交条件は内積を用いて表せますから,問題の状況を数式に落とし込めば後はただの計算問題になります. 簡単な問題なので落とさないように注意.
第二問 確率漸化式(A15),30点 解答例
問題の概要と方針
2つの動点が同じ位置にいる確率を求める問題です. 愚直に状態を分割すると収拾がつかなくなるので,上手い分割の方法を探します.
講評
事象の分割の仕方によって計算量が大きく変わる問題です. 動点の動き方を図に書いてみると良い分割の仕方に気づきやすくなるでしょう. できるだけ上手い分割をしたいですが9つの状態に分割しても解く事は可能なので,試験場ではとにかく完答することが大切です. 演習では良い解法,愚直な解法のどちらも試してみると良いかもしれません.
第三問 図形量の最大最小(A20),35点 解答例
問題の概要と方針
ある条件をみたす最大面積の三角形の内角を評価する問題です. 結果は予想しにくいですが,面積を内角の大きさの関数として考えれば微分法を利用することができます. 面積と内角の関係は正弦定理を用いると簡単に評価できるでしょう.
講評
面積を内角で表現すれば微分を使って内角が求められるので,やることはあまり難しくありません. しかし,図計量なので定義域の扱いに気をつける必要があるなど,記述が難しい問題ではあります. まずは答えを出すことが大切ですが,記述する際には論理の飛躍がないように細心の注意を払いましょう.
第四問 軌跡・領域(A25),35点 解答例
問題の概要と方針
関数が条件をみたすようなパラメータの存在条件を求める問題です. 条件式の形に注目して,より分かりやすい数式表現へと変形していきます.
講評
基本的には同じような形式の問題と同様に,問題文の条件をより簡単で同値な条件に変形していくことで解決していきます. その際,中間値の定理を利用して,条件を変形する箇所があり,それがこの問題のポイントになっています. 基本的に難しい問題ではありませんが,論理が破綻しないように細心の注意を払いながら記述をしなければならないので,時間はかかるかもしれません.
第五問 整数(B30),35点 解答例
問題の概要と方針
整数問題です. 倍数を考える問題なので,因数分解や合同式などを利用して考えます. 考える式が対称式になっていることにも注意するといいでしょう.
講評
発想力が求められる問題ですが,複数の解き方が考えられ,そのうちの一つを見つけることは十分現実的でしょう. ただし,この問題はこの年では一番難しい問題で,余り執着しすぎないよう注意する必要があります.
第六問 求積(B25),35点 解答例
問題の概要と方針
半径の明示されていない円と双曲線で囲まれた領域の面積を求める問題で,円の半径は問題文の条件から求めます.
講評
分かるところから順番に解きほぐしていく,パズルのような要素の強い問題です. 図を積極的に描いて問題の状況を掴んでいきましょう. 状況さえつかめれば一直線に答えまでたどり着けます.
各大問の解説記事
このブログの全記事の一覧を用意しました.年度別に整理してあります.
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