※2019年の問題の解説です. 2020年はこちらにまとめてあります.

概要

前回に引き続き2019年の東工大数学の解説です. 解説記事ですが予備校の解答速報がまだなので解答速報代わりにも使えると思います. 東工大は東大,京大と並ぶ名門大学であるにもかかわらず,扱いが軽いように思えます. 試験当日に解答速報を出しても良さそうなものですが…

今回は第四問(1)を解説します. 空間図形について数列を構成させる問題です. 今回(1)だけの解説ですが,(2)・(3)は他の大問の解説と講評を投稿してから解説します. 理由は$3$つあって,

  1. (1)だけで他の大問と同じくらいの難易度・ボリュームがある
  2. 解答時間と配点が全く釣り合っていないため「捨て問」になってしまっている ((1)は捨てるほどの難易度ではないですが,やはり時間と配点の観点から他の大問より優先順位は低めです)
  3. (2),(3)は今年一番といっていいほどの良問であるため,しっかりとした解説記事を書きたい

1.の理由から,解説記事が長くなりすぎないよう記事を分割することにしました. また,2.の理由から,(2)・(3)の平均得点率は非常に低いと思われるため,解説を後回しにしても解答速報代わりに十分使えると判断しました

3.の理由は他の記事を終わらせてから時間にゆとりをもって記事を書きたい,という意味です. 解説記事を書いても解答速報としての役割はほとんど果せないので,その代わりに解説に力を入れる予定です. 入試で出たら間違いなく捨てですが,演習することによって得られる経験値はかなりのものだと思います.

(2)・(3)は(1)の考え方に加え,上手く示すためにさらなる発想が求められる問題です. この大問は京大特色入試の比較的易しめな問題と同レベルの難易度があります. せめて他の大問の$2$倍くらいの配点があれば試験問題として機能したでしょう.

ただし,(1)は有名問題です. この問題自体,昔出題されたことがあるはずですしこれの類題である平面バージョンは多くの参考書に載っているでしょう. 独特の解法がありますので,解法を知らない受験生が時間内にこの問題を解き切れるかは不明ですが,解法さえ知っていればこの問題はさほど難しくありません. おそらく作問者はこの問題を知っていることを半ば期待していたのだと思われます.

問題

難易度:B25 ((1)のみ)

正直問題文の長さから見ても($1$)だけで大問$1$つ分ありそうです. (2)・(3)はそれぞれ$2,3$番目に大きいものを求める問題です.

(1)のように「最も大きい」値を求めるのはそこまで難しくありません. 不等式で最大の場合だけを扱っていけばよいからです. 一方,(2)・(3)のように最大ではない値を求めるのはかなり苦労します. とりうる値を具体的に考える必要があるため,考える範囲を広げなければならないからです.

この問題を解く上でのポイントは,「毎回切り分ける領域の数が最大になるように切断」すれば,最終的に切り分けられた領域の数も最大になるということです. 常に最大の場合だけを考えればいいので,比較的簡単に解くことができます. では,実際に解答していきましょう.

解答例

※スマホ等で文字化けする場合はpdf版をダウンロードして見てください.

($1$)

平面$H_1,\cdots,H_n$を平面が一つもない状態からどのような順序で置いていってたとしても$T$の値は問題の状況と変わらないから,$H_1$から$H_n$の順に置いていくことを考える. ここで,$T(H_1,\cdots,H_n)$の最大値を$M_1(n)$とおく.

$n = 1$のとき,常に$2$つの領域に分割されるから,$M_1(1)=2$である.

次に,すでに$n$枚の平面がある状態から,もう一枚平面を加える状況を考える. すでに$n$枚の平面がある状態から,もう一枚平面を加えたときに増加する領域の個数の最大値を$P_M(n)$とする. このとき, \begin{align*} \tag{1} M_1(n + 1) \leqq M_1(n) + P_M(n) \end{align*} と言う関係が成り立つ. ここで,新たに加えた平面による断面を考えよう. 既に$n$枚の平面が空間内にあるので,断面には最大で$n$本の直線が存在している. 断面上の直線の本数が$k$本であるとき,この直線らによって分割された領域の個数$m(k)$だけ,新たに領域が増加する. 今,$m(k)$の最大値が$\frac{k^2 + k + 2}{2}$であり,$k$本の直線が互いに平行でなく一つの交点で$3$本以上の直線が交わらないときには最大値を取っていることを示そう.

【証明】

$m(n)$の最大値を$a_n$とする. $n = 1$のとき,$a_1 = 2$である. 次に,すでに$n$本の直線がある状態から,もう一本直線を加える状況を考える.

新たに加えた直線は最大で$n$本の直線と交わるから,増加する領域の個数の最大値は$n + 1$である. よって, \begin{align*} \tag{2} a_{n+1} \leqq a_n + n + 1 \end{align*} という関係が成り立つ. よって,(2)より,$n \geqq 2$のとき \begin{align*} a_n &\leqq \sum_{i = 1}^{n - 1} (i + 1) + a_1 \\ &= \frac{n^2 + n + 2}{2} \end{align*} これは$n = 1$のときでも成り立つ. ここで,$n$本の直線は互いに平行でなく,一つの点では$3$つ以上の直線が交わらないように取ることができるが,このとき$(2)$の等号は常に成り立つ. よって,最大値$a_n$は, \begin{align*} a_n = \frac{n^2 + n + 2}{2} \end{align*} であることが示された.

(証明終)

よって,$P_M(n)$の最大値は$\frac{n^2 + n + 2}{2}$であり,新たに加えた平面に$n$本の直線が互いに平行でなく一つの交点で$3$本以上の直線が交わらないように存在しているときには最大値をとっていると分かる. これを(1)に代入して, \begin{align*} \tag{3} M_1(n + 1) \leqq M_1(n) + \frac{n^2 + n + 2}{2} \end{align*} と言う関係が成り立つと分かる. よって,これの総和をとれば,$n \geqq 2$のとき \begin{align*} \tag{4} M_1(n) &\leqq \sum_{i = 1}^{n - 1} \frac{i^2 + i + 2}{2} + M_1(1) \\ &= \frac{n^3 + 5n - 6}{6} + 2 \\ &= \frac{n^3 + 5n + 6}{6} \end{align*} これは,$n = 1$のときも成り立つ. ここで,$n$枚の平面が互いに平行でなく,かつどの平面もその平面以外の任意の$2$つの平面による交線と平行でない (追記:かつ交線を含まない) ように取ることができるが,このとき$H_1,\cdots,H_n$の順に$H_k$を空間に設置していけば,$H_k$を設置する際,$H_k$による断面には$k-1$本の直線が互いに平行でなく一つの交点で$3$本以上の直線が交わらないように存在しているので,ここまでの議論で考えた不等式の全ての等号が成立する. よって最大値は$M_1(n) = \frac{n^3 + 5n + 6}{6}$であり,これを実現する平面の組は確かに存在する.

(解答終)

コメント

解答は以上のようになります. 順序を決めて平面を設置していくことで,議論がしやすくなっています.漸化式を自分で作っていくタイプの問題ですね. 実際に$T$の最大値をとる平面の組があることも示しておきましょう.

ここで,この解答の議論では「最大値をとる必要十分条件」ではなく,「最大値をとる十分条件」のみを求めていることに注意してください. 最大値をとる平面の組が一つでも存在することを示せばよいので,このような書き方になっています.

やや冗長な書き方になってしまった気がします. もう少し簡潔に解答できたかもしれません.

次回は(2)・(3)を一回パスして第五問の解説をします. 第四問は個人的には好きな問題ですが,試験の結果にほとんど影響しなそうなのが残念.

各大問の解説記事

このブログの全記事の一覧を用意しました.年度別に整理してあります.

過去問解説記事一覧【年度別】