数学アマノジャク

数学の入試問題の解説をしたいブログ. 「暗記数学」に対抗して「考える数学」を広めていきます. 現在は京大入試の過去問解説を中心に鋭意更新中.

概要

※この記事は当ブログ管理人一個人の私的な見解です.

※数学のみの講評です.いわゆる解答速報ではない上,他の科目はやりません.

この記事は2021年東工大一般入試の,数学の問題についての雑感です. いわゆる講評で解答速報ではありません.

また,略解は一部載せていますが,例年と違って他者の確認を経ていないので,自分で検証できる人だけ参考にしてください.

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去年の東工大入試の講評

目次

設問の難易度等

まずは設問別の難易度評価から.

ただ,他年度との比較はまだ行っていませんので,とりあえず「単年度」でのおおまかな難易度評価だけざっと述べておきます.

そういう訳で,これまでの難易度評価との互換性はありません.

以下では,他の設問と比べて易しい問題は「易」,難しい問題は「難」,残りを「標」としています.

設問の分野・配点,設問の難易度の目安

  1. 場合の数・数列, 60点
  2. 平面図形, 60点
  3. 整数, 60点
  4. ベクトル, 60点
  5. 軌跡・領域・微積分, 60点

※いつもより主観的なので注意.

試験全体の難易度

どの大問も(1)はかなり簡単で,時間もほとんどかからないと思います.

一方,第二問,第三問の(3)が比較的難しめです.

第一問(2)や,第三問(2),第四問(3)も気づけば簡単ですが「ハマる」ときがありそうな問題です.

どれもそこまで難しい問題ではありませんが,全てを真面目に解こうとするとかなり忙しくなります.

なお,「易」のなかでは第五問(2)が難しめです.逆に「標」の第四問(2)は易しめです.

残りの問題はそれこそ「標準的」と言えそうな問題ばかりで,多少の実験,観察,計算によって正解しうる問題です.

試験全体の構成

全体的に「東工大入試としては」難しい問題が見られない一方で,小問数がかなり多いという印象を覚えました.

今年はコロナの影響で学力低下の懸念があったので,その備えだったかもしれないと予想していますが,見当はずれかもしれません.

標語的には「2020年の試験から,難易度をそのまま問題数だけ増やした試験」といった感じでしょうか.

東工大として比較的低難度な問題をたくさんという構成なので,要は他の一般的な大学の入試のようになったということです.

長試験時間,少大問数なのは変わらないので,名大入試的な構成と言った方がいいかもしれませんね.

一方,分野は例年とあまり変わらない印象です.

ただし,複素数の出題はありませんでした.第二問(3)を複素数で解くことは一応可能ですが,あくまで「不可能ではない」という程度の話で,出題されなかったとみるのが素直だと思います.

総評

問題数が多い忙しい試験,なようで意外とそうでもありません.

確かに,全ての小問を解こうとすると (つまり,満点を狙おうとすると) 時間的にかなりタイトです.

ただ,難しい問題を無理に解こうとしなければ,易しい問題が多かったのもあって逆にゆとりを持って解答できたはずです.

ゆとりがあるということは,残った時間で何問か解きうるということなので,満点を取りたい人以外は難易度,時間,分野のどれも例年と大きく変わらない試験だったと予想しています.

まあ,さすがに去年よりは難しいと思いますが,例外は去年の方です.

各大問の解答の方針と講評

大問ごとの概要です. 略解は参考程度に.

第一問 場合の数・数列, 60点

第一問の解答

概要 (第一問)

総和に関する不等式の問題です.

(1)はただの誘導で,(2)が主眼になっています.

方針・略解 (第一問)

(1)は各桁に$9$を含まない$k$桁の正の整数の場合の数なので, $a_k = 8 \cdot 9^{k -1}.$

(2)は(1)を参考に各桁の整数ごとに別々に和をとって不等式で評価することを考えます. すると, $$ \sum_{n = 1}^{10^k - 1} b_n = \sum_{k = 1}^{10} b_n + \cdots + \sum_{k = 10^{k - 1}}^{10^k - 1}b_n \leqq 8 + \cdots + \frac{8 \cdot 9^{k - 1}}{10^{k - 1}} < 80 $$ のようにして証明できます.

講評 (第一問)

$\displaystyle \sum_{k = 1}^\infty \frac{1}{k}$は発散してしまうのに,この級数は収束する,という面白い問題です.

定義からして真面目に計算できそうに見えないので不等式を使うわけですが,その使い方がポイントです.

誘導は要るのだろうかと解いているときは思いましたが,無ければそれなりに難しくなるのでいいバランスなのかもしれません.

(2)は程よい難易度で,多少の試行錯誤から方針を立てられると思います.

第二問 平面図形, 60点

第二問の解答

概要 (第二問)

楕円上の四角形を考察する問題です.

(1)は誘導,(2)も一応(3)の誘導になっていますが,そこまで強いつながりではありません.

方針・略解 (第二問)

(1)

楕円の式に$y = ax + b$を代入した $$ \frac{x^2}{4} + (ax + b)^2 = 1 $$ が相異なる2実解を持つことが必要十分条件になります. $$ 4a^2 - b^2 + 1 > 0. $$

(2)

(1)で$P, Q$の$x$座標 (または$y$座標) をほぼ求めているのでそれを使うのが簡単です.

$l, m$の傾きが$a$であることから,$P, Q$の$x$座標の差と,$S, R$の$x$座標の差が等しいことが条件と言えて, 結局 $$ c = -b $$ が条件となります.

(3)

方針①

(2)で各点の$x$座標を求めているので,そのまま$P,Q,R,S$の成分表示で考えていきます. $$ \begin{aligned} \overrightarrow{PQ} \cdot \overrightarrow{PS} &= 0 \\ \left| \overrightarrow{PQ} \right| &= \left| \overrightarrow{PS} \right| \end{aligned} $$ となることが$PQRS$が正方形となる条件なのでこれを実際に計算します.

少し汚いですが計算を進めると,最終的に各辺が座標軸と平行な,$\left(\pm \frac{2}{\sqrt{5}}, \pm \frac{2}{\sqrt{5}}\right)$を頂点とする正方形だけが答えと分かります.

方針②

(2)から$l, m$が原点について点対称となっていることが分かるのでこれを活用します. 楕円$E$も原点について点対称なので,$P$と$R$,$Q$と$S$は点対称な点で,対角線は原点で交わります.

正方形とは長さが等しい対角線が中点で直交する四角形のことなので,楕円上の正方形の$4$頂点は$1$点の極座標表示$r, \theta$だけで表せることが分かり,$4$点全てが楕円上に乗るという条件から方針①と同様の正方形が得られます.

講評 (第二問)

(1), (2)は比較的易しめです.

(3)は他の大問の設問と比較しても難しめです. 基本的には,他の問題を解いてから最後に臨む問題になると思います.

ただし,例えば方針②のような計算量の少ないやり方を思いついて,意外とすんなり解けたということはありうると思います.

第三問 整数, 60点

第三問の解答

概要 (第三問)

二項係数に関する整数の問題です.

(1), (2)ともに誘導です.

方針・略解 (第三問)

(1)

二項係数の定義にしたがって実際に計算.

(2)

漸化式 $$ a_{n + 1} = \frac{2(2n + 1)}{n + 2}a_n $$ が得られれば,数学的帰納法で証明可能.

(3)

$n = 2, 3$が答え. これは簡単に実験で予想できるので,この証明を目指します.

方針①

$n \geqq 5$で$a_n$が合成数であることを証明します. $n = 1, 2, 3, 4$は具体的に計算.

(2)の結果と上の漸化式を使うと $$ a_n > 2n + 1 $$ と示せます. 一方で,$a_n$を素因数分解すると$2n$未満の素数しか含まないことが分かるので,合成数であると示せます.

講評 (第三問)

~~が素数となる○○をすべて求めよ,という形式の問題を本当によく見かけるようになったな,というのが最初に見たときの感想でした. どうでもいいですね.

さて,この問題はよくある$3$なり$5$の倍数であることを示してささっと解けてしまう問題とは少し違って,合成数であることだけが示せます.なにか具体的な素数$p$の倍数というわけではありません.

偶数なように見えるかもしれませんが$a_7$は奇数です.

本問の(3)と,第二問の(3)が最も難しい設問ということになるだろうと思います.

二項係数ということで既に整数の積 (と商) の形になっているのでそれを使う訳ですが,略解の方針にしろ他の方針にしろ あまり見かけない論法だと思うのでなかなか思いつきにくいと思います.

なお,(1)と(2)はそう難しくないので,(2)まで解くのが目標といったところでしょうか.

(3)は予想だけして,証明は余裕があればといったところ.

第四問 ベクトル, 60点

第四問の解答

概要 (第四問)

ベクトルの問題です. $\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}$があたかも一つのベクトルのようになっているというのがポイント.

(1)は(2)の誘導で,(3)は(2)の続き,あるいは具体例です.

どちらかといえば(2)がメイン.

方針・略解 (第四問)

(1)

実際に計算して, $$ k = -2. $$

(2)

$\vec{a} + \vec{b} + \vec{c}$をまとめて一つのベクトルとみてみると, 半径$3$の球内を動くベクトルと球面を動くベクトルとしてとらえられます.

後は図形的に見ても数式だけで処理してもあまり変わらず, $$ M = \frac{9}{2}. $$

(3)

$D$の位置と(2)の結果から$\vec{a} + \vec{b} + \vec{c}$(重心とみてもよい) が決まりますが, $C$の位置から$|\vec{a} + \vec{b}| = 2$と分かります.

つまり,ただ$1$点に決まってしまって, $$ \vec{a} = \vec{b} = \begin{pmatrix} \frac{7}{8} \\ -\frac{\sqrt{15}}{8} \\ 0 \end{pmatrix}. $$

講評 (第四問)

要は(1)は(2)の誘導になっているわけですが,ここに誘導がつくのは少し驚きました.

この誘導により,(2)がかなり見通しやすくなっています.

個人的には(2)も「易」とするか迷いましたが平均点は低そうな予感がしたので「標」ということにしておきました.

(3)は$1$点に決まってしまうので実はそこまで難しくはないのですが,(3)はかなり特別な状況で基本的には円になるので,先に円が見える逆に見えにくくなるかもしれません.

何かのはずみで$|\vec{a} + \vec{b}|$を計算してしまえば一瞬で氷解します.

第五問 軌跡・領域・微積分, 60点

第五問の解答

概要 (第五問)

恒例の積分の問題です.

計算量はありますが,ほとんど一本道です.

方針・略解 (第五問)

(1)

円周の下半分$y = a - \sqrt{a^2 - x^2}$が常に$x^2$より上にあることが条件で,計算すると, $$ a \leqq \frac{1}{2}. $$

(2)

同様に$x^2 - x^4$より上にあることが条件で,計算すると結局同じ $$ a \leqq \frac{1}{2} $$ が答え.

計算するときは,$X = x^2$と置換すると見やすくなります.

(3)

まずは円$C$を無視して4次関数の上側の回転体の体積を求め,そのあと$C$の回転体の分だけ「くりぬき」ます.

4次関数の上側下側合わせた回転体 ($0 \leqq y \leqq \frac{1}{4}$),つまり円筒の体積は $$ V_1 = \frac{\pi}{8} $$ と表せ,4次関数の下側の回転体の体積は $$ V_2 = \frac{\pi}{12} $$ と表せます.この結果から,4次関数の上側の回転体の体積は $$ V_1 - V_2 = \frac{\pi}{24} $$ と求まります.

一方,円$C$の回転体 (球) の$y \leqq \frac{1}{4}$の部分の体積は$a = \frac{1}{8}$を境に場合分けして, $a \leqq \frac{1}{8}$のとき $$ V_3 = \frac{4}{3}\pi a^3, $$ $a \geqq \frac{1}{8}$のとき $$ V_3 = \frac{a}{16}\pi - \frac{\pi}{192} $$ となります.

これらを合わせ,求める体積は $a \leqq \frac{1}{8}$のとき $$ V = V_1 - V_2 -V_3 = \frac{\pi}{24} - \frac{4}{3}\pi a^3, $$ $a \geqq \frac{1}{8}$のとき $$ V = V_1 - V_2 -V_3 = \frac{3}{64}\pi - \frac{a}{16}\pi $$ と計算できます.

講評 (第五問)

(1)は(2)の誘導なのだと思いますが,ほぼボーナス問題. 境界は曲率円になっていますが本問では特に意味はありません.

(2)も解き方は(1)とほとんど変わらず,ただ少し計算量が増えているのみです.

計算量は多少ありますが,そもそも$x \ll 1$なら$x^2 - x^4$と$x^2$はほぼ同じグラフですからほとんど結果は見えています.

なお,このことを利用して$a = \frac{1}{2}$の付近だけを検討するという論法も考えられます.

$a = \frac{1}{2}$で含まれるなら$a \leqq \frac{1}{2}$でも含まれることはすぐに示せるので,$a > \frac{1}{2}$では含まれず,$a = \frac{1}{2}$で含まれることを示せばほとんど終了です.

(3)は(2)までが分からなくても計算可能で,関連はあっても解く際には独立した問題です.

$V_3$は$y$軸,$V_2$は$x$軸で計算すると比較的計算しやすいと思います.

この大問はやることが分かりやすく一直線なので,時間をかければ確実に得点できます.

計算速度次第ですが優先したい問題の一つではあるでしょう.

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去年の東工大入試の講評

このブログの全記事の一覧を用意しました.年度別に整理してあります.

過去問解説記事一覧【年度別】

概要

自作の模試を作るシリーズ第四弾です.

今回の模試『令和3年度私擬無冠模試』はどこの大学も冠さない,ただの自作模試です.

東工大入試と京大特色入試の中間くらいの難易度だと思うので,忙しい受験生は避けた方が無難です.

時間のゆとりがあるときに,やりたい問題だけやってみてください.

5問構成で推奨試験時間240分です.

問題ファイルは以下のリンクからダウンロードできます.

以下では解答例を載せているので,問題を解こうとしている方は見ない方が良いと思います.

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過去の自作模試の問題・解答です.

これらは難易度を一般入試に合わせているので,本模試より問題演習に適切な難易度かもしれません.

京大模試サンプル (没問題集)

令和3年度私擬京大入試

令和3年度後期私擬京大入試

令和3年度私擬東工大入試

目次

模試の難易度評価

本模試の大問構成,分野,配点,難易度評価は以下のようになっています.

無冠模試の分野・配点

  1. 整数・ベクトル (C60), 40点
  2. 微積分 (B35), 40点
  3. 代数 (B40), 40点
  4. ゲーム理論 (B60), 40点
  5. 数列 (C45), 40点

模試全体の構成

どこの大学も模さないということで,一般入試ではあまり見かけないような問題が中心です.

高校範囲の知識で解けますが,入試で出てきたら「新傾向」と言われるような分野や,一般入試では少し難しかったり,面倒だったりする問題が多めです.

模試全体の難易度

時間内に解こうとすると,第一問,第四問が鬼門になると思います.

第一問は上手く思いつけば短時間で解答できますが,なかなか思いつきにくいと思います.

対照的に,第四問は作業量が多いだけで,根気よく実験していけば,どちらの小問も特別な発想なく解答可能です.

一方.第二問・第三問は一般入試レベルの問題なので,まずはここから取り組むとやりやすいでしょう.

第五問も実験すれば予想くらいは立てられると思います.

まずは第二問,第三問,第五問の予想までやってみて,その後に第一問,第四問,第五問の証明でできそうなものからやっていくという流れでしょうか.

総評

$4$時間で全問出来る人は間違いなく凄いですが,$3$問程度の正解でも一般受験層のかなり上位に位置しているのではないかと思います.

「面倒」な問題が多いですが,第一問以外は手が出る問題だと思うので,模試として考えれば$1, 2$問正解するのが目標でしょうか.

各大問の解答の方針と講評

大問ごとの概要です.

第一問 整数・ベクトル (C60), 40点

第一問の解答

概要 (第一問)

ベクトルと整数の融合問題です.

この問題はR. L. Graham,B. L. RothschildとE. G. Strausが1974年に発表した定理を基にしています.

本問では,その定理で$n= 2$とした場合を誘導付きで考えています.

なお,元の定理はThe American Mathematical Monthlyに掲載された,"Are there $n + 2$ Points in $E^n$ with Odd Integral Distances?"に載っているので興味があれば参照してください.

方針 (第一問)

(1)は実際に$(2k + 1)^2$を計算すればすぐにわかります.

(2)では(1)が誘導になっているので,まずは(1)の結果を(2)で使いやすいように適当に一般化しておくと良いでしょう.

その後は,背理法を使うと比較的易しく解けます.

講評 (第一問)

誘導も付けたのでそう難しくないだろうと思っていましたが,見込みが外れたようです.

(2)は直接示すのはしんどいので,背理法で示すことになると思いますが,その次の手が見えにくかったかもしれません.

背理法の仮定が,$A, B, C$が同一平面上にあるということを意味するとさえ見抜ければ,力技でも解答可能です.

解答例では,内積と角を利用しています.

原案では誘導無しで

「どの$2$点間の距離も奇数であるような$4$点は同一平面上にないことを示せ」

という問題文を考えていたので,やさしくするための誘導のせいで余計難しくなってしまったかも?

第二問 微積分 (B35), 40点

第二問の解答

概要 (第二問)

フレネル積分を題材とした微積分と数列の問題です.

他の問題と比べると,一番一般入試の問題に近い問題だと思います.

方針 (第二問)

$s = t^2$のように置換するとかなり見えやすくなります.

あとはそれぞれの小問の目標に向かって良い評価を探していきます.

講評 (第二問)

(1)と(2)は似た考え方をしますが並列的な構成になっているので,どちらを先に解いても大丈夫です.

片方が解ければもう片方もそれなりにやさしく解けるようになっています.

(2)の不等式評価の方がひねりが少なくて多少解きやすいかもしれません.

この大問からもう少し考察すると,有界な単調済列が収束することさえ認めれば,$\displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n$と$\displaystyle \lim_{n \to \infty} b_n$が存在して,両者が等しいことを示せます.

すると,値は求まりませんが,フレネル積分の$x \to \infty$の極限が存在することも容易に示せます.

値を求めたい場合は複素関数として考えて,留数定理を用いるのが有効です.

第三問 代数 (B40), 40点

第三問の解答

概要 (第三問)

複素数と似て非なる数体系である「分解型複素数」が題材です.

複素数における「極形式」に相当するものを考える問題です.

方針 (第三問)

(1)は定義にたがって計算すれば自然と示せます.

(2)はただの見掛け倒しで,簡単な領域の問題です.この問題独特の概念はほとんど必要ありません.

(3)は,ド・モアブルの定理の証明とほとんど同様に示せます.

講評 (第三問)

この五問の中だと一番簡単な問題です.

第二問と第三問は,一般入試で出題されても捨て問にはならないと思います.

手間は多少かかりますが,それも他の問題と比べればそこまで大したことはありません.

(2)では,境界は含まず$(0, 0)$だけが含まれます.

そこまで重要というわけではないですが,一応注意しながら解くといいでしょう.

第四問 ゲーム理論 (B60), 40点

第四問の解答

概要 (第四問)

かの有名な「三目並べ」です.「二人零和有限確定完全情報ゲーム」とよばれるゲームの一種になります.

分野は「場合の数」にしようかとも思ったのですが,しっくりこなかったのでそのまま「ゲーム理論」ということにしました.

「組み合わせ」なら妥当なのですが.

手間がかかるので,この手のタイプは一般入試では出題されませんが,京大特色入試のような時間にゆとりのある試験だと見ることもあります.

方針 (第四問)

(1)

「ゲーム木」の考え方が有効で,それに近いものを考えれば上手く示せます.

すべての盤面を考えると図示・場合分けだけでも大変です.

対称性を利用して似た盤面を同一視するなど,とにかく場合分けを減らすことが肝心です.

解答例では$10$程度の場合分けに抑えています.多分もっと減らせるはず.

(2)

(1)が誘導になっています.

実験してみると,(1)より少し大きい盤面では勝てることが分かるはず.

講評 (第四問)

解答例のようにたくさん図示する必要はありません.あれは手書きでやるものではないです.

書き出せばすぐ分かるのは明らかなので,場合分けが発生する個所など,要点を抑えれば十分です.

有名な題材ですが,数学の対象として考えたことのある人はほとんどいないと想像します.

最重要な$3 \times 3$がとても面倒なので練習問題としてやりにくいのだと思います.

既知の人が十分いることが想定されるので,実際の入試でも出しにくいですね.

もう少しひねったオリジナルのゲームを考えることになると思います.

第五問 数列 (C45), 40点

第五問の解答

概要 (第五問)

Wikipediaで偶然見つけた「Van Eck数列 (Van Eck's sequence)」という数列の構成ルールをいじっていたら,この数列になりました.

元々人工的な数列ですが,それをさらにいじったので極めて人工的な感じのする数列になっています.

方針 (第五問)

一般項が予想できるまで実験しましょう.

予想した後は帰納法がやりやすいと思います.

講評 (第五問)

そう難しい問題ではないと思いますが,見た目に圧倒されやすいかもしれません.

第四問の後なのも,難しく見える要因になりそうです.

実際は一般入試でも出題できる程度の難易度です.

まあまず見たことのない数列だと思うので,実験する以外ないですね.

この数列自体は一応発見されているようで,OEISには登録されています.

ただし,本問の漸化式は記述されていなかったので,未発見だったのかもしれません.

ちなみに,Van Eck's sequenceもOEISに登録されています.

(ii)の2.の部分で, $$ a_{n + 1} = 0 $$ とすればVan Eck's sequenceになります.

独り言

問題により難易度・手間が激しく異なるので,手のつきそうな問題だけ解く方が楽しめるかもしれません.

ちなみに,今回はほぼ新作です.

次の模試も考えてはいますが,10月は大手予備校の模試のシーズンなので,早くても11月の上旬になると思います.

関連記事

過去の自作模試の問題・解答です.

京大模試サンプル (没問題集)

令和3年度私擬京大入試

令和3年度後期私擬京大入試

令和3年度私擬東工大入試

このブログの全記事の一覧を用意しました.年度別に整理してあります.

過去問解説記事一覧【年度別】

概要

未発表の過去作を集めて自作の模試を作るシリーズ第三弾です.

今回の模試『令和3年度私擬東工大入試』は東工大模試です.

5問構成で試験時間180分です.

問題ファイルは以下のリンクからダウンロードできます.

以下では解答例を掲載しているので,問題を解こうとしている方は見ない方が良いと思います.

目次

模試の難易度評価

本模試の大問構成,分野,配点,難易度評価は以下のようになっています.

自作東工大模試の分野・配点

  1. 複素数 (A20), 60点
  2. 微積分 (C45), 60点
  3. 整数 (B25), 60点
  4. 微積分 (B35), 60点
  5. 確率 (B25), 60点

今回は自作のため特に主観が入りやすく,難易度はあまりあてにならないことに注意してください.

2020年の難易度評価

参考用に,2020年の東工大入試の難易度評価を置いておきます.

  1. 整数 (A20), 60点
  2. 複素数 (B30), 60点
  3. 図形の論証 (C20), 60点
  4. 求積 (A20), 60点
  5. 積分漸化式・極限 (B40), 60点
難易度表記の説明 カッコ内の難易度表記はAA,A,B,C,Dの五段階による難易度評価と,演習する際の標準的な解答時間(五分刻み)です. 試験場では様々な要因により,ここに書いてあるよりも苦戦すると思います.

難易度評価は,それぞれ

  • AA:解けないと周りの受験生とかなり差がついてしまう問題
  • A:解ければとりあえず数学が足を引っ張ることはない,という難度の問題
  • B:解けると周囲に対してやや優位に立てるが,解けないとやや不利になる問題
  • C:数学が得意なら正答が狙える難度で,解けなくても困らないが,解けると大きく優位に立てる問題
  • D:難易度が高すぎて点数と釣り合わない,いわゆる「捨て」の問題

であることを大まかに表しています.

大体『大学への数学』より(受験生に)厳しい評価で,『東工大の数学20ヵ年』よりは甘い評価かなと思います. 数学が苦手な人は最低限Aの問題を確実にBの問題をできるところまで,数学が得意な人はCの問題まで完答するのが目標かなと思います. 難易度Dの問題はどんなに数学が得意な人でも部分点狙いが現実的でしょう. 個人的にはこの難易度の出題は作問者の判断ミスだと思っています.

試験全体の構成

微積$2$問,整数$1$問,複素数$1$問と,東工大入試でよく見かけるような分野構成のつもりです.

全体を通しての計算量はそう多くありませんが,第二問を中心にある程度計算量がある問題もあります.

そこまで発想力のいる問題はありませんが,後半$3$問はある程度考える必要があると思います.

模試全体の難易度

難易度や雰囲気も近づけたつもりですが,それを判断するのは解く側なのであまりコメントしないでおきます.

公開時はちょっと簡単すぎ (2020年くらい?) な気がしましたが,その後考えを改めむしろ少し難しいかもしれないと思うようになりました.

東工大入試の難易度の振れ幅は極めて大きいので,「例年の難易度」からは大きく外れていないと思います.

総評

第一問・第三問が易しめなのでまずは先に解いて確保し,その後第二問前半,第四問,第五問のうちできるところを確保,最後に第二問を時間が終わるまでやってみるという感じでしょうか.

東工大入試は問題の重厚さと比べ,解答スペースがあまり広くないので,今回もそれに合わせて論理的に重要なところを抑えつつ,ある程度簡潔に書くと良いと思います.

各大問の解答の方針と講評

大問ごとの概要です.

第一問 複素数 (A20), 60点

第一問の解答

概要 (第一問)

とある有名な定理の証明問題です.

2018年の北大後期入試第二問の前半とほぼ同様の出題です.

作問の労を惜しんだという批判は甘んじて受けましょう.

方針 (第一問)

(1): $A_1$を求めれば,$A_2$もついでに出てきます.

複素数の積が回転に対応していることを活かしましょう.

(2): 正三角形を「夾角が$\frac{\pi}{3}$の二等辺三角形」とみることがポイントです.

そう見えれば,複素数の乗法・商法の意味を考えれば容易に示せると思います.

講評 (第一問)

第一問なので比較的易しめの問題です.

誘導も付けたのでほとんど一本道で解けると思います.

時間がかかってもあまり問題はないですが,正答はしたいところです.

第二問 微積分 ((1):A15, (2):C30), 60点

第二問の解答

概要 (第二問)

(1)はやっぱり有名な曲線の図示問題ですが,どちらかといえばマイナーな媒介変数表示なので,見たことはない人も多いと思います.

(2)は計算問題ですが,「ただの」かどうかは知りません.

方針 (第二問)

(1)は指示に従えば解けます.

問題は(2)ですが,(1)の結果から立式した後,置換積分することまでは自然に思いつくはずです.

問題はその後ですが,有理関数の積分の王道に従って部分分数分解するか,もう一回置換積分をして$\frac{1}{\cos^n x}$の積分に帰着させるかのどちらかでやるのが思いつきやすいでしょうか.

解答例は後者でやっていますが,私が計算を苦手にしていることもあってあまりすっきりとしていません.

講評 (第二問)

解答例の公開前に難易度を口にしたくなかったというだけで,自作なので当然「ただの計算問題」かどうかはさすがに分かっています.

かなり大変です.

(2)の途中まではやることが分かりきっていますが,その後の計算量はかなり多く,見通しが立ちにくい計算を進めることになります.

時間をかければ解けるタイプの問題ではあるので,最後の計算は他の問題を解いてから手を付けるので良いと思います.

計算量が多く,詳細を書いていたら解答用紙にとても収まりきらないので,総評でも書きましたが,ただ代入,約分,変数を整理するだけのような論理的には重要でない部分はカットして,論証の主要な部分を書くのが良いでしょう.

第三問 整数 (B25), 60点

第三問の解答

概要 (第三問)

便宜上整数に分類していますが,有理数の問題です.

方針 (第三問)

とりあえず有理点に文字を置いて式を連立しましょう.

すると連立方程式が解けるので,自然と示せます.

講評 (第三問)

有理数同士の加減乗除は有理数になる,と言うのがポイントです.

そう難しくはないと思いますが,方針を思いつくのに苦戦することはあるかもしれません.

ところで,この問題は連立一次方程式に帰着されるので, (大学範囲の) 線形代数の知見を活用することもでき,$a, b, c$を具体的に求めずに証明可能だったりします.

線形代数を既習の方はやってみると面白いかもしれません.

当ブログでも後日別解として紹介することも考えています.

ちなみに,代数の言葉で言えば,本問の鍵は「$\mathbb{Q}$は体である」ということになります.

作った当時はあまり意識していませんでしたが.

第四問 微積分 (C35), 60点

第四問の解答

概要 (第四問)

微積の問題二問目です.

(2)で考えている定積分は楕円を折り返したときの共通部分の面積ですね.

方針 (第四問)

(1): $C_2$は$C_1$を$2\alpha$だけ回転させた図形になることがポイントです.

全体的に「角」が多用されているので,極座標のように考えると見通しが立ちやすいでしょう.

(2): (1)の誘導があるのでそう難しくはないと思います.

積分区間に$\alpha$を持っていけば,簡単に$\alpha$で微分できます.

講評 (第四問)

図形的に捉えられないと,(1)の計算量がかなり増えそうです.

また,例のごとく解答スペースの問題があるので,そこまで詳細にやらなくても,図形的に考察できれば十分な気もします.

第五問 確率 (B25), 60点

第五問の解答

概要 (第五問)

誤植があって,規則の$A, B, C$はそれぞれ$O, A, B$の間違いです.

確率の問題です.

この${ X_n }$によってとある図形が作図できます.

方針 (第五問)

とりあえず実験してみて,動きを追えればよいと思います.

解答用紙の大きさもあるので,適宜図示しながらざっくりと説明できれば容認されるのではないでしょうか.

厳密に示すなら解答例のように領域に名前を付けて証明していくか,ベクトルで求めるのが有力だと思います.

講評 (第五問)

解答例はまじめに示すこともできるよ,というもので,あれを解答欄に書くのは無理があることには注意してください.

解答例は問題の要求に対して過剰であまり気に入らないのであとで別解も出すつもりです.

そこまで難しい問題ではないと思っているのですが,特に作問者と解答者で感じ方が違いそうな問題なので,実は難しいかもしれません.

点がどのように変化していくのかを上手く追えると,簡単に解答できると思うので,それができるかが鍵となりそうです.

ちなみに,この操作によってフラクタル図形である「シェルピンスキーのガスケット」を近似的に作図できます.

解答例はフラクタル図形ができる様子まで考えているので,本問に対して過剰な記述になっているわけです.

独り言

今回は結構過去作を使えていて,後半3問はリライトはしていますが何年も前に作った未公開問題です.

次回はどこの大学の入試も模さない,「無冠模試」の予定です.

京大理学部特色と東工大一般の中間くらいの難易度の問題群 (5問,240分くらい?) を予定しています.

多分9月上旬に公開しますが,第三週の週末になる可能性もあるので,決まり次第お伝えします.

追記:次の自作模試 (というより問題セット) は9/11に公開予定です.

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京大模試サンプル (没問題集)

令和3年度私擬京大入試

令和3年度後期私擬京大入試

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